ロンドン

Silver

1666年ロンドン大火災、その復興には250年かかった。

メーカーTreefrog games
発売年2010年
作者Martin Wallace
プレイ人数2-4人用
対象年齢13歳以上

ゲーム概要

ダークなテーマのワレス節

2010年に発表された、ワレス作「ロンドン(第1版)」。現在は第2版が流通しているが、初版と大きく異なるのはボードの存在。ゲーム内容は大きく変わらないとされている。

このゲームのテーマは、1666年のイギリスで発生したロンドン大火災からの復興。ゲームでは、大火災で消失したロンドンの街をカードを使って復興していく。カードは多種あり、特殊能力の組み合わせでコンボを狙えるのが特徴。主軸のメカニクスはハンドマネジメントとシティビルド(現在のメカニクス分類で言えば、エンジンビルド?)。資金繰りはそこまで厳しくないが、ワレスのゲームらしく、苦しいマネジメントが求められる中量級のゲームである。

街の建設と、貧民の救済を行うことがゲームの目的となっている。手札を手に入れて街を建設していきながら、街と手札の豊かさに伴って増えていく貧民(貧困ポイント)を如何に管理していくかという重いテーマのゲームだ。街を復興させるために建設と活性化を行なっていくが、活性化を行うたびに計上される貧困ポイントがゲーム終了時に大きなマイナスとなるためにとても悩ましい選択を迫られる。

ゲームボードは上下に分かれていて、上部はロンドンの地図、下部はカードディスプレイ。2版では上部がなくなった。

手札から要らないカードを捨てる時は、カードディスプレイに配置しなくてはならない。その後、誰かがカードを取る時は、山札でもカードディスプレイからでも取ることができる。すなわち、他人に使われてしまうかもしれないジレンマがあるわけだ。完全に捨て札になった場合の捨て場所は別に用意されている。

手番で出来る事は大きく分けて4つ。

手番で出来る事

1.土地を買う
2.カードをプレイして街をつくる
3.街を活性化してカードの効果を適用する(そして貧困ポイントを得る・・)
4.カードを3枚獲得する

ロンドンの地図は区画に分けられている。ゲーム開始時は赤い文字の中心部3区画から土地の購入をすることができる。

土地を購入すると、勝利点とカードが手に入る。また、土地には街を活性化する際に、貧困ポイントを減らす効果がある。貧困ポイントというのは、処理しきれなかった貧民によるマイナスポイントで、ゲーム終了時に減点となる。街を復興して豊かになった反面、貧困も溢れるというシステムでジレンマが発生する。

買った土地には自分のマーカーを置く。土地は、誰かの土地に隣接するようにしか購入できないところがポイント。売り切れたらそれでおしまい。
ロンドンの街には、地下鉄を敷くこともできる。ゲーム終了時、自分の土地に地下鉄が敷かれていれば、追加で勝利点を獲得できる。ただし、地下鉄もロンドンの中心地から繋がるように敷かなければならないので、自分の土地だけに敷くわけにはいかない。

土地の値段は結構お高い。しかし、安心して欲しい。このゲームの作者はワレスなので、ゲーム中いつでも借金をすることができる。泣く子もだまる借金タイルの返済には、1.5倍の資金が必要という悪徳高利貸し(ワレス)だ。

さて、カードには建物(カード下部に礎が書かれているもの)と建物以外のカードがある。当然、建物は建設することができる。

建物カード(左) 建物以外のカード(右)

カードを建設するには、手札からコストを支払う必要がある。建設したいカードに対応する色のカードを1枚、カードディスプレイに捨てなければならない。カードをディスプレイに捨てるということは、誰かに獲得されるかもしれないことと隣り合わせなので、これもジレンマの素。また、建設するために追加でお金を必要とするカードもある。

各自の前には自分の街があると仮定して建設を行っていく。一度に何枚でもカードをプレイすることができるが、同じ列に立てられるのは1手番に1枚まで。それ以上は列を増やすしかない。列を増やしてしまったら、二度と減らすことはできない。そしてカードの列数は貧困ポイントを生む。

自分の前にカードの列を並べて街を建設していく。

建設したカードは、別のアクションである「街の活性化」を選択することによって効果を発揮する。
カードの効果は「お金/勝利点がもらえる」「活性化を2回行える」など強力なものばかり。

ただし、効果を発揮するのは一番上のカードだけ。下に埋まってしまったカードの効果を発揮させることはできない。埋まってしまったカードは、ゲーム終了時の得点計算で再びお目見えするのみである。

そして、街の活性化を行った後は、恐怖の貧困タイム。

貧困ポイント

(自分の建物の列+手札のカード枚数ー土地の数)の貧困ポイントを受け取る。

貧困ポイントは、ゲーム終了時に激しくマイナスポイントとなる。決して手札が多い時に街の活性化を行ってはいけない。マゾでなければ。

こうして、ロンドンの街に建物を建設し、貧民を救いながら復興を行っていく。カードの山が無くなったらゲーム終了の合図。最後の1手番を行った後に、土地、地下鉄、建物、貧困ポイントの得点計算を行う。最も勝利点を獲得したプレイヤーが勝利者となる。

プレイ記

TBGL宮原ゲーム会にて。ほーまるさん、Kunさん、海賊船さんと4人プレイ。COQは緑を使用。

ゲーム開始時はお金と貧困ポイントを持ってスタート(貧困ポイントは忘れがちなので注意されたし)。

さぁ、ゲームスタート。カードの山札はA〜Cに区分けされており、初期にはAのカードしか出ない様になっている。ゲームの進行に応じて強力なカードが出てくるので大味になりにくい。良き。

そんな中でも「海軍婦人部隊(クリストファーレン)」は強い。カードディスプレイにあるカードを2枚手札に持って来れるのだ。

というわけで、初手は早速街の建設。クリストファーレンの力を借りてカードを獲得し、建設にいそしむ。最初から3列の建物を建設。建物の列が多い程、後に貧困ポイントを被る事になるので注意だがここは攻めだ。
そして、建物の列の数はゲーム中減らす手段が無い。

最初はお金がきついので、お金を貰えるアクションを中心に展開していく。なお、一番右のカードは白い駒が2つ書かれており、活性化することによって貧困ポイントを2つ捨てることができる。初手でプレイするほどのカードでもなかったかもとこの時点で思うが、あとのカーニバルである。

建設には対応するカードをコストとして捨てる必要がある。こうして建設の為に使用されたカードは、建物ディスプレイに置かれて誰でもとれるようになる。そして、このラウンドで他のプレイヤーは皆土地の購入をした。

負けじとCOQ(緑)も購入に走る。土地によって(値段/カードの枚数/勝利点)は違う。建設をしたばかりでカードも無いので、カードが貰えて勝利点もそれなりで…みたいな土地を捜す。

皆、お金が無いので借金をして購入。「死んだらドラゴンボールで生き返らせればいいじゃない。」というくらい短絡的なプレイだ。しかし、街を活性化するには土地が必須。貧困ポイントの受け皿となってくれるのだ。

次の手番も、土地を買う。土地は出来れば連続した土地に購入するのが望ましいが、資金がショボイので序盤はやむなし。青のKunさんと緑のCOQは土地を多めに取得していく。

当然、資金は借り入れ金。荒廃したロンドンで、若くしてマイホームを購入するには、スネをかじるか、暴利に目を瞑るか、さもなければ悪い事でもするしかないのだ。スネかじりも悪事も趣味ではないので、作者の用意してくれたありがたい借金タイルを頂く。

土地購入で増やした手札を一気にプレイして、自分の街を拡げる。この時既に7列、序盤としてはかなり多い方かもしれない。

次の手番、記念すべき初活性化。お陰で一気に資金が手に入る。ワレスゲーらしからぬ金回りの良さだ。この辺りは、このゲームがそれほどキツくないワレスと評される所以だろう。

使用後、裏返しマークのあるカードは即座に裏返し、使用不可能になる。次の活性化に向けて建設を進めなくてはならない。この後、今回の活性化に伴って貧困ポイントが発生する。

赤のほーまるさんも、借金を重ねて土地獲得合戦に参加してきた。既に3つの借金タイルを目の前に並べている借金王。

黄色の海賊船さんは、街の建設に力を入れて資金稼ぎに従事している。お金プレイのようなものがあるのか。ないのか。

青のKunさんは、土地の購入と、土地から勝利点を叩きだすカードのコンボを狙っているようだ。ほぼ全員のプレイヤーが一生懸命土地を買おうとしているので、土地の売れ行きが良い。それはつまり、それによって引かれるカードも多いということ。ゲームは案外早く終わりそうだ。

先ほど手に入れた資金で、COQも土地を購入。潤沢な資金があるので、今度は連続し、勝利点の高い土地を狙い撃ち。連続した土地に地下鉄を敷く算段である。

とはいえ、あまり借金を重ねるのも勝利が遠のきそうなので、街の活性化を目指してカードをプレイ。

「自然史博物館」は、何度活性化しても、カードを裏返す事無く勝利点が貰え、貧困ポイントも捨てられるという素晴らしいカード。文化的な素養に溢れるCOQにふさわしいカードだ。この街を活性化して、資金を獲得して地下鉄を敷きたい。

しかし、ここで痛恨の出来事。青のKunさんが、自分の土地に地下鉄を敷いたのだ。こうなると次の地下鉄は、地下鉄マーカーが置かれた区画の隣りにしか置けない。今マーカーが置かれている区画の隣りにはCOQの土地があるが、連続はしていない。従って、誰かに地下鉄をプレゼントする羽目になってしまうのだ。

次の手番、涙をぬぐって街の活性化。初手にプレイした「私設救貧院」がやっと機能し、貧困ポイントを返上する。これでまた資金ができた。秘策のための資金が。

COQの用意した秘策とは、「地下鉄」と「ホワイトホール」のコンボ。この2枚を活性化することによって、一気に4箇所の地下鉄を敷くのだ。これらのカードはプレイ自体にカードを捨てることとは別にお金がかかるので大変。だが、成功したときの勝利点は破格、やるしかない。

これ以上の借金を避けたいCOQとしては、常に自分の資金との相談。カードの山は枯渇に近づき、ゲーム終了までに返せる算段がつかないからだ。

そんな中、手札を圧迫するしか能のない「貧困者」のカードをお金と勝利点に換える、「救貧院」でほーまるさんが怒濤の追い上げを見せてくる。

今回プレイしているメンバーの中では、3回目というほーまるさんが一番カード内容を把握している。カードを把握すれば、カード同士のインタラクションを画策できるようになり戦略の幅が広がるのだ。この時点で、残りのカードは4〜5枚か。地下鉄突貫計画を間に合わせるしか、COQの勝つ道は無い。

資金の全てを投入し、街の建設を行う。地下鉄とホワイトホールも無事設置できた。他のプレイヤーは未だ何が起るか気付いていない模様。

あとは手番がもう一度くればOKだが、カードの山札を枯渇させたプレイヤー以外にはもう一度手番がまわってくるため、地下鉄突貫計画は成功したも同然。

次のCOQの手番開始時、なんと山札のカードは1枚のみ。ここでCOQは、このカードを獲得してゲームの終了を宣言する。ゲーム終了時、余った手札は貧困ポイントとなるので、街の建設にカードを消費した今がチャンスなのである。

この手番で地下鉄を敷き、他のプレイヤーの計画を頓挫させてカードを持ったままゲーム終了へ導く。一気にロンドン西部に地下鉄を敷き、一気に大量得点。これでCOQの狙いは成った。

あとは、得点計算に託すのみ。このゲーム、貧困ポイントや借金によって大量失点する場合があるので、最後まで勝者は読みにくい。

最終得点計算。結局COQは、ほぼ全ての資金を投入したため、序盤の借金は返済できず。マイナス7勝利点を獲得するという結果に。

他のプレイヤーが1手番ずつを消化してゲーム終了。最後の手番は手札を消費することに使用せざるを得なかった模様。おかげで、貧困ポイントもトップという嬉しい結果となった。

最終得点

COQ:49 ほーまる:44 海賊船:43 Kun:43

無事、地下鉄を敷ききったCOQが僅差で勝利。復興を成し遂げた。

プレイ時間:150分

総評

Silver

カードを多用し、ワレスらしくないと評されるゲーム。
しかし、ワレスらしいか、らしくないかは別にして、これは良い方のワレスです。これはよくまとまっていて面白いです。借金もできますし。このゲームが好きかどうかは、広く沢山の効果を持つカードを利用する事を楽しいと思えるかどうかが鍵ですね。何度もプレイすることによってカードの全貌も見え、スルメのように面白くなっていくでしょう。そして、次はもっと上手くやれる(やれた)ことがこのゲームの面白味だと思います。ルールは見た目よりも簡単なので敷居は低めです。難点は、少しダウンタイムが長い所。テンポ良く遊べれば、それにともなって面白さも倍増すると思いました。判断の早いプレイヤーと遊びたいゲームです。

作者はこのゲームをデザインする際、カードに建物という役割以外に住民という別の役割を持たせたそうです(手札にある時かな?)。ゲームを苦しくする貧困ポイントが建物と手札から生まれるのはこのせいかもしれません。個人的には、これが非常にうまく機能しているという印象です。カードを抱えて選択肢を増やしたいものの、街の活性化を行う際には、貧困ポイントを避ける為にカードを圧縮しなくてはなりません。ハンドマネジメントは難しいですが、勝つためのベクトルは同じ方向を向いています。私はこの一貫性が気に入りました。

昔と比較するとワレスを嗜むワレサーがかなり増えてきた印象です。是非ワレスを楽しんでください。・・・悪いワレスにあたるまでのそのひとときを。

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