Short Review
野を越え 山越え 谷越えて
メーカー | CGENasza Księgarnia |
発売年 | 2017年 |
作者 | Jeffrey D. Allers |
プレイ人数 | 1-4人用 |
対象年齢 | 6歳以上 |
ゲーム概要
アートワーク100億点の鉄道タイルゲーム
ポーランドのメーカーから発売されている「汽車は進むよ」です。Nasza Księgarniaというメーカーに見覚えはないかもしれませんが、ムーミンの出版をしているメーカーと言えばその偉大さがわかっていただけるでしょう。近年、この大手出版社がボードゲーム市場に参入してきています。そして、デザイナーはJeffrey D. Allersです(「シトラス」や「もっとホイップを!」のデザイナーです)。なお、pociągの発音はポチョンクです。
チクタクバンバン系タイル配置
「チクタクバンバン」が万人にイメージを共有できるものなのかどうか怪しいのですが、要するに、タイルを配置して線路を伸ばしていくゲームです。伸ばす線路の先には、7色の駅舎があります。手番では、全員が同時に1枚ずつのタイルを自分の枠内に配置していきます。すると、タイルを置くたびに、つながった線路の上を汽車駒が走っていきます(汽車が動ける場所にしかタイルを置くことはできません)。各色の駅舎に到達した順番が早いほど高い点数が入ります。
各自の枠の左下には4台の機関車駒があり、4本の線路が伸びています。これを伸ばして駅舎につなげる競争です。ちなみに、汽車同士が衝突するような置き方をしてしまうと駒がボードから取り除かれてしまいますので注意が必要です。
序盤は計画的に終盤はダイナミックに
手番で行うのは、タイルを1枚引き、自分の枠内に配置するだけです。したがって、序盤はかなり計画的に線路を敷いていくことができます。しかし、終盤になってくると1枚のタイルを置いただけで汽車が10枚分くらいのタイルを一気に駆け巡ったりします。タイルの運もあるので思いもよらないような動きになるのも面白いポイントです。
動かせる汽車がなくなるか、すべてのタイルが配置されるとゲーム終了です。
大事なのでもう一度書きます:アートワークが100億点
4人分のコンポーネントが同梱されています。特筆すべき素晴らしい点は、この素敵なイラストに加えてすべてのセットの絵柄が異なることです。もちろん、タイルごとの絵柄も異なります。裏面の絵柄も全てユニークです。このアートワークだけでも所有の価値があるゲームです。
基本ルールと拡張ルール
「汽車は進むよ」には、基本と拡張の得点ルールが付属しています。
小さい子供と遊ぶ場合(この場合は基本得点ルールをお薦め)以外は、②の「基本+最長路線」のルールで遊ぶことをお薦めします。単に早く駅舎に着けば良いわけではなくなるので、断然、プレイヤー間のインタラクションが増加します(かといって、線路がつながれば一気に汽車は進むため、調節も難しいのがポイントです)。
デザイナーによるバランス調整
バランス調整をした1〜4人用得点ボードと5〜8人用得点ボードがデザイナー自身の手によりボードゲームギークに投稿されています。
ゴールのマスが汽車の数と同じになり競争が激しくなると共に、駅舎への早い者勝ちレースの得点が増加し、順位による勾配も厳しくなります(当初着順に漏れたプレイヤーはマイナス点となるボードでしたが、ネガティブなイメージをなくす為にプラスの得点を増やしたバージョンが最新版として公開されています)。これにより、最長路線を狙うのか、早めに駅舎を目指すのかの選択が余計に悩ましくなりますね。ルールは拡張②を適用してください。
ちなみに、同じ手番で同時に複数のプレイヤーが駅舎に到着した場合は、そのすべてのプレイヤーが同じ得点を得ます。例えば、4人プレイで黄色の駅舎に2人のプレイヤーが同じ手番で到着し、次の手番で3人目のプレイヤーが、さらにその次の手番で4人目のプレイヤーが到着したとすると得点は12/12/7/0となります。プレイ人数に応じて、使わないプレイヤーのマーカーでマスを隠して(汽車の数とゴールマスの数を揃えて)使用します。
5〜8人でゲームをプレイするにはゲームが2セット必要です。リンクボタンを用意しておきましたので、ダウンロードページへは下のボタンからどうぞ(ダウンロードにはボードゲームギークへの会員登録が必要です [無料])。
総評
Bronze
ものすごく手軽に遊べるタイル配置の鉄道ゲームです。線路を伸ばしていくという行為自体に原始的な楽しさがあるような気がします。テーマが汽車のため、子供にもキャッチーですが、汽車の駒が小さいので最初のうちは動かすのが難しいかもしれません。
大人が遊ぶ時は、最初から拡張の②(基本+最長路線)のルールを選択した方が良いと思います。基本ルールのみですとインタラクションが薄いため、余計にソロゲームを遊んでいるような気分になります。拡張ルールで丁度ゲームの軽さに見合ったくらいのインタラクションを得ることができると思います。
日本で販売しているものには印刷された綺麗な日本語ルールが付属しているようです(筆者が購入したバージョンには付属していました)。
素晴らしいアートワークはそれだけで所有の価値がありますし、短い時間で手軽に大人同士の熱い勝負もできる良いゲームだと思います。タイルのめくり運も大きいし、終盤は計画性を保つことが難しい部分もありますが、一気に駆け巡る汽車を見て騒ぐのが逆に面白いゲームです。