君が泣くまで、出荷するのをやめないッ!
発売年 | 2002年 |
作者 | Andreas Seyfarth |
プレイ人数 | 2-5人用 |
対象年齢 | 12歳以上 |
ゲーム概要
20年以上経過してなお色褪せないドイツゲームのターニングポイント
『プエルトリコ』は、今から20年以上前に発売されたドイツのボードゲームで、プレイヤーが17世紀のプエルトリコの総督となり、植民地の発展と経済の発展を促進することを目指すゲームです。このゲームは、その独特なゲームプレイと戦略性、そしてリプレイ性の高さから、ボードゲーム界に大きな影響を及ぼしました。
- 役割選択メカニズム(ヴァリアブルフェイズオーダー): このゲームの特徴といえばこれ。プレイヤーがラウンドごとに様々な役割を選択するメカニズムを導入しました。このメカニズムは後に他の多くのゲームに取り入れられ、プレイヤーの選択とリソース管理の重要性を強調することでゲームの戦略性を高めることに貢献しました。
- 建物の配置と経済成長: プレイヤーは植民地を発展させるために建物を配置します。この建物配置メカニズムは、多様な戦略性を与えました。
- リプレイ性と戦略性: 異なる戦略やアプローチを試すことができるため、プレイヤーに高いリプレイ性を提供しました。この要素は、後のゲームにおいても重要視され、プレイヤーに長く楽しめる体験を提供するゲームデザインに影響を与えました。
- ドイツボードゲームブームの一翼: 本作は、2000年代初頭のドイツボードゲームブームの一翼を担いました。このブームにより、ドイツ製ボードゲームは国際的にも注目されるようになり、世界中でボードゲームが再評価されるきっかけとなりました。
以上のように、『プエルトリコ』は、ボードゲームのデザインやメカニズムに革新をもたらしました。紹介する必要もない程有名なゲームで、面白さも広く伝わっている作品ではありますが、現代では有名過ぎてプレイできていない方もいるかもしれないので当時(2009年?)の記事を加筆して再掲載します。
プエルトリコの総督になる箱庭経済ゲーム
本作で、プレイヤーは17世紀のカリブ海の島、プエルトリコの総督となり、植民地の発展と経済の発展を目指します。ゲームの目的は、自分の植民地を発展させ、最も多くの勝利点を獲得することです。勝利点は建物や植民地の発展、貿易などによって獲得します。平たく言えば、各自に配られた植民地ボードに農園と都市を築き、商品を出荷して勝利点を獲得していくゲームです。
ヴァリアブルフェイズオーダー
ゲームは複数のラウンドで構成されており、各ラウンドではプレイヤーが役割を選択して行動を行います。役割には、植民地の発展や貿易、建設などがあります。1人が役割を選択した後、全員が順番にそのアクションを実行していきます。その後、次のプレイヤーが残っている役割を選択します。これを繰り返すのが所謂ヴァリアブルフェイズオーダーと呼ばれるメカニクスで、このゲームの大発明でした。選ばれたアクションを全員が実行し、選んだ本人には少し恩恵があるというメカニクスです。逆に言うと、各ラウンドでは選ばれたアクションしか実行されないことになります。選ばれなかったアクションには金貨が乗り、次のラウンドで選ばれやすくなるのも特徴です。
ヴァリアブルフェイズオーダーの特徴的なところは、役割カードを選択した本人がその役割をこなすだけでなく、全員が順番にその役割のアクションを行うことです。カードを選択したプレイヤーは、通常のアクションに加えて「特権」を使用することができます。「特権」は、建設のコストを安くできるなど、その役割特有の有利なものばかりです。
建築家(建物の建設)、開拓者(農園の設置)、市長(労働者の入植と再配置)等を駆使して思い描く箱庭を作っていきます。それぞれのタイルは、個人ボードに置かれた後、労働者駒(茶色の円盤駒)が置かれて初めて稼働します。発揮される効力はゲームを有利に進めるものばかり。これらの効力を組み合わせてコンボを決めるのもゲームの面白味の一つで、様々な戦略を試みることができます。
労働者は、毎ラウンド入植船に乗ってやってきます。労働者の人数は、全プレイヤーの空いている(稼働していない)建物によります。誰かが「市長」の役割を選択することによって、この駒が配られ、労働者の再配置が行われます。
配備された農園からは、「監督者」の役割によって商品が産出されます。ただし、とうもろこし以外はそれぞれの原材料を商品に加工する建物が稼働していることが必要です。農園のみでなく、工場が建設されており、それぞれに労働者が配備されていなくてはならないので計画的に進めないといけません。
産出された商品は、「商人」の役割を選択することによって売却してお金に換える事ができます。この時、同じ種類の商品は1つしか売れず、4つのマスが埋まるまで売られた商品はのったままになります。全員の保有している商品は公開されているので、周りのプレイヤーが持っている商品を良く観察しながらのプレイが求められるわけです。うまくやることで、自分だけが商品を売却することも可能でしょう。売却価格は商品によって異なりますが、価格を上げる建物や、同じ商品を売れるようになる建物などがあるので戦略によって立てていきましょう。
そして、勝利点を手にするためには「船長」のアクションで商品を出荷しなければなりません。出荷とは、用意された3隻の船に商品をのせていくこと。各船1種類の商品しか置けず、満杯になるまで船は出港しません。ここでも、周りのプレイヤーが持っている商品を良く観察する必要があります。出荷できる商品がある場合には出荷をすることが必須であり、さらに、出荷できなかった商品は1個を除いて腐るというキツいシステムです。出荷できなかった商品を保管しておくための建物もあります。
こうしてラウンドを行っていき、ストックの労働者駒もしくは勝利点チップが無くなるか、誰かが都市に全ての建物を建設(12マス)するとゲーム終了です。出荷で得た勝利点チップと建物から得られる勝利点、そして特殊な建物から得られる勝利点を合計し、最も多くの勝利点を獲得したプレイヤーが勝利します。
様々なバージョン
名作ゆえにこれまでに様々なバージョンが発売されています。ゲーム概要で紹介しているのはAREAの初版にメビウスゲームズで取り扱っていた日本語タイルを使用しています。現在は、拡張が同梱されているプエルトリコ20が流通しています。筆者は「プエルトリコ」「プエルトリコ10周年記念版」「プエルトリコ20」を所有していますが、「プエルトリコ14」「プエルトリコ1897」もあるようです。そして、2025年にはクラウドファンディングによる「プエルトリコ1897豪華版」の発売も計画されているようですね。
プレイ記
Tさん、Kunさんと3人プレイ。ベストプレイ人数は4人だが、何人でも楽しめる懐の深さもこのゲームの良いところ。今となっては稚拙なプレイ記で恥ずかしいが、雰囲気が伝わればと思い、当時の記載をほぼそのまま掲載。
さて、このゲームは役割を選択するところから始まるわけだが、先手番は誰にも邪魔される事無くまっさらな植民地へ入って行ける。その分有利過ぎない?ということで、初期に貰える農場に差がつけられている。具体的には、1番2番はインディゴ農場。3番はトウモロコシ農場が貰えるのだ。
何が違うのかというと、トウモロコシは農場だけで(建物なしに)作物の生産が行えるのに対し、その他の畑はそれぞれの製造工場を建物として建設しなければならないのだ。ゲームを通し、この違いは大きい。(この差が激しすぎるので、現在のヴァリアントルールでは初期資金の勾配が設けられたようだ。)
まさに、トウモロコシを制する者がこのゲームを制すると言っても過言ではない。何が何でもトウモロコシを愛してやまないプレイは「もろこしマンセープレイ」と呼ばれる。その他にも色々な戦略が研究されているゲームだが、COQは有利な3番手となったのでこれを実行することにする。
とうもろこしだ!ヒャッホウ!
トウモロコシ畑を装備してスタートするCOQの植民地。トウモロコシが植えられているというだけで、この安心感である。もし君が女性に告白するなら、花束はトウモロコシに決まりだ。そして、彼女が伴侶となった時、夕飯の後にプエルトリコをプレイして君の配慮に伴侶となった女性が感服することだろう、あの時のトウモロコシと。トウモロコシの花束をプレゼントするセンスで婚姻関係までこぎ着けられればの話だが。
ところで、上家の二人は両方ともインディゴなので、最初から被っている。この辺りも3番手が有利な理由のひとつである。
2匹目のトウモロコシを捜すも、初回の場にはタイルが無かったので、とりあえず最も価値の高いコーヒー農場をゲットしておく。
そして、建設では「小さな市場」を建設。トウモロコシは、売っても0金にしかならないので、市場で値段をブーストアップする必要がある。着々と進むモロコシ戦略。
今回のプレイでは、メビウスゲームズが販売している日本語タイルを使用している。昔はプリンタで打ち出したシールを貼ってゲームをしたものだが、日本語タイルはとても便利。国内流通しているプエルトリコを購入すれば、最初からついてくるという便利っぷり(筆者注:執筆当時の話です)。ただし、誤訳の訂正は行われなかったようなので、宿屋が病院になっている。だが安心してほしい、脳内で病院を宿屋と読む練習を欠かさなければ良いだけの話だ。
やがて植民地に初の入植者登場。トウモロコシ農場は大人気なのですぐ埋まった(ウソ、自分で選べます)。これでもうトウモロコシの生産ができるわけだから笑いが止まらない。
隣りのKunさんはインディゴに的を絞ったようだ。綺麗にインディゴ農場が並んでいる。生産設備が無いのでまだ商品を生産できないのが苦しいところ。
そんな中、COQ植民地に2匹目のドジョウがやってきた。トウモロコシ農場が取れるかどうかは手番が早く来るラウンドでのタイル次第なので、ドキドキする。
ちなみに、選択されなかった役割にはお金がのる。こうして、人気の無い役割にも次第に旨味がでてくるわけだ。
モロコシでアドバンテージのあるCOQは、商人を選択してモロコシを売却する。他のプレイヤーはまだ生産をすることが出来ないので、この時点では独壇場だ。
そうして稼いだお金で病院、、おっと失礼、宿屋を建設(脳内の練習が足りていなかったようだ)。これの効力は、農場タイルを取った時に、無条件で入植者をストックからのせられるというもの。プレイスタイルにより違うが、自分は大好物。
他のプレイヤーは、ともにインディゴの生産施設が建ち、発射準備が整ってきたようだ。
続けてCOQは「建設小屋」を建設。これで並んでいる農場タイルに関係なく採石所が取れるようになる。
しかも、宿屋のお陰で入植者が即くっついてくる。入植者ののった採石所は、建設時にコストを1下げてくれる。終盤にさしかかるにつれ高コストの建物を建てなければならないので、今のうちに準備を進める。建物自体も勝利点となるため、勝利へもにじり寄る大事な戦略。
モロコシ三連星も揃い、盤石の出荷体制。オルテガ!マッシュ!と言いたくなったところで、ポテトっぽいと思い自制する。脳内の練習が活きた結果だ。
余裕が出てきたので以前にとっておいたタバコとサトウキビの生産設備にも手を出す。周りを見渡すと、他の陣営は入植者不足に苦しんでいるようだ。宿屋が無いと入植者不足に陥り易い。対面のTさんは「大学」を建設しているが、宿屋と同じような能力(建物を建てた時に入植者がのる)なのにこちらはあまり初〜中盤には役に立ちにくい。使い方の難しい建物だが、その分玄人好みと言える。
充分に土台ができたので、この先は機械的に目標へ進んで行く。まずは採石場を増やす。大体3つ以上が目標。
同時に、最後の建築へ向けてお金を貯めるため、「大きな市場」の建設も進める。さらに、「港」を建設して出荷の体制も整える。「港」は出荷の際、追加でポイントが貰えるというモロコシと非常に相性の良い建物。ここから怒濤の出荷ラッシュ。実はこのゲーム、出荷が行われると出荷できなかったものは1個を除いて腐ってしまう。機を見て、相手が出荷しきれないタイミングを狙うことも重要。
君が泣くまで、出荷するのをやめないッ!
そんな、次々とポイントを獲得するCOQ見てKunさんが悲鳴をあげる。
これ以上長引かせても差が開く一方です…。
Kunさんがゲームを終わらせるため、入植者を枯渇させようとしてくる。勝利を盤石とするには、残りわずかな手番で、最終得点計算で得点を稼ぐ事の出来るスペシャル建物を建設しなければいけない。
最後にCOQは、豊富な入植者を得点に換える建物を建築してゲーム終了。トウモロコシのスタートダッシュを維持出来たおかげでスピードゲームとなりました。
プレイ時間:50分
総評
Platinum
ここで推挙するまでもなく、このゲームは傑作です。筆者は子育てのためにしばらくボードゲームを休んでいた時期がありましたが、復帰後遊んでも全く色褪せていませんでした。いまだに本作を超えているゲームは少ないでしょう。
このゲームがボードゲームに及ぼした影響は大きく、世界的にも高く評価されています。PCゲームやBGAなどのオンラインゲームサイト、i padにも移植されています。ボードゲームに求める楽しさがほぼすべて詰まっています。過去の稚拙なプレイを晒すのには少し躊躇したのですが、豪華版が計画されているという話もあり、雰囲気がわかると良いだろうと思って再掲しました。
「プエルトリコ20」は日本語版が流通しており、これまでに発売された拡張要素も含んでいて、しかも安価というお得なことしかないゲームなので、気になった方は触れてみていただきたいです。20年以上前のゲームということで、一周回って未プレイの方が結構いるので遊ぶ相手には困らないですし、(現代では)中量級の傑作枠の1つです。終了直後、誰もがもう一度と思えるくらいのボリュームにも関わらずたっぷり楽しめてお得です。流石、星の数ほどあるゲームを押しのけてTOP3に長年君臨していただけのことはあります。