臆病者の目には、常に敵が大軍に見える
メーカー | Queen Games |
発売年 | 2006年 |
作者 | Dirk Henn |
プレイ人数 | 3-5人用 |
対象年齢 | 12歳以上 |
ゲーム概要
名作陣取りゲームのセルフリメイク!
名作陣取りゲーム「ヴァレンシュタイン」の同作者によるリメイク『将軍』です。リメイク作には色々な心配が付きまといますが、これはリメイクでさらに良くなったと評価されているゲーム。何より、日本が舞台というところが日本人としては嬉しい限りです。
ゲームでは、日本の戦国時代を舞台に国穫り合戦を繰り広げます。領土とした国には、寺院や城、能楽堂などを建設して守りを堅め、勝利点を獲得します。
見た目そのままの群雄割拠
ゲームボードの情報は、説明の必要は無いくらいに単純です。日本地図上に区切られた領土に自分の色の兵隊がいれば自分の領土。そこからは季節ごとに米や軍資金の調達ができます。ただし、調達をした領土の農民には不満がたまり、一揆が起きるかもしれません。
キューブを投げ込んで戦闘する
敵地への侵攻を選択したならば、このゲームのシンボルとも言うべき塔が登場します。フェルト作の「アメリゴ」でもこのコンポーネントが使われていましたが、「ヴァレンシュタイン」と「将軍」がオリジナルです。攻める側と守る側の将兵をここへ一気に投入し、下に出てきた駒でその勝敗を決するのです。塔の中は入り組んでおり、駒がひっかかって倍の兵力で攻め込んだのに負けてしまうなんてことも。時にはあらかじめ入れられていた駒や、農民がでてきて戦闘結果に影響を与える場合もあります。
四季折々のアクションは手に入れた領土カードで
自分の領土のカードは手札に加えることができます。手番ではこのカードを使用して様々な命令をだすのです。
ゲーム中の手番は季節ごとに巡ってきます。手番では、10種類のアクションを1度ずつ行うことができます。このアクションを指定するのに、領土カードを個人ボードに書かれた10種類のアクションの上に並べて行きます。どの領地でそのアクションを行うのか、ブラインドで予約しておくわけです。
10種類のアクションの解決順は毎季節ランダムに決まります。各アクションごとにカードを表向けて行き、カードで指定した領土へ兵を覇権したり、徴収したり、戦争をしたりしていきます。
また、各季節には、イベントカードの適用があります。神社のある領土には攻め込めない等のイベントや、冬に供出する米の量を決定したりします。冬の供出を行うことができなかったプレイヤーの領土では、一揆が起きてしまいます。
得点を与えるのは、建物自体とエリアごとの建物順位、そして統治している国の数です。ゲームは2年に渡って行われ、それぞれの年の最後に得点計算が発生します。2年が経過した時点で、最も得点を稼いでいるプレイヤーが勝利します。
プレイ記
TBGL宮原ゲーム会にてTさん、Jさん、MOGさんと4人プレイ。COQは赤色:徳川家康。この日までにCOQはヴァレンシュタインは2回ほど経験があるものの、将軍は初プレイだった。
まっさらな地図からゲームスタート。初心者用の初期配置もあるけれど、今回は配置の段階から勝負を開始することに。
初期配置用の部隊を個人ボードの裏で準備する。これらの部隊を日本各地に派遣していくわけだ。COQは徳川家康、でも特に武将による特典があるわけではない。それでも、有名な武将が登場しているので気分は盛り上がる。ただ、武将の顔が似てないのと、秀吉の家紋が信長になっているのが玉に傷ではある。
山札から2枚めくられた領土のうちどちらかか、山札の一番上の領土に自分の部隊を派遣していく。領土を固める様に獲得するか、全国に散らばるように獲得するか、最初から大きく局面が広がる。
ゲーム開始前には塔へ各自の兵隊と農民を放り込んでおく。これが転がり出てきて勝敗を分けるのである。
結局、このような配置でゲームはスタート。COQ家康はなぜか京周辺と四国に展開、少し早めの長宗我部討伐を目指す事に。MOG謙信は史実に近く北陸に拠点を。J信玄は既に甲斐を追われ、T秀吉は全国に散らばっている。
1年目春 ドドン
最初の季節がやってきた。春の小川のようにサラサラとこなしたいが、しばし熟考。日本の中心地を拠点にしたのはいいが、いかんせん周りには血に飢えた精力がひしめき合っている。しかも、京周辺の領土は資金調達能力が高いので狙われ易い。ここはやはり、兵を置かなくても安心できる土地、すなわち四国を平定しなくては。しかし、初手のカード配置を行っている際にはたと気付く。
米どころが無い…orz
これはゲームを通して家康の泣き所となりそうだ。
四国平定にはやはり、讃岐に陣取るJ信玄が邪魔。ここを討伐すべく、海を渡った隣国の播磨に兵を集中することにする。ところで、地図の上部にある武将カードは手番順を示している。ここには元々、各季節で与えられる特殊能力カードが置かれており、獲得したカードのところに自分の武将カードを置いていく。
欲しい能力と手番順を天秤にかけ、同時ビッドの競りを行うことになる。お金は大事なのでそうそう手番順に大金も叩けないけれど。
という訳で有言実行、早速播磨に兵隊を集める。初手で京周辺の緊張が一気に高まる。
…が、それに呼応するように隣国のJ信玄も兵を増強。読まれていたのか偶然か、J信玄はこのゲームのためにリアルに扇子まで用意する周到振り。きっと、この増兵も今日朝起きたときから決まっていたに違いない、流石。
その後、各地に築城が行われたりして手番が進む。また、資金集めや年貢の徴収なども行われる。徴収を行うと不満カウンターが貯まり、一揆が起きたり、侵攻された時に農民が敵になったりするので中心地ではあまりやりたくない。
COQ家康も負けじと土佐に兵力を増強。わかりずらいが、実際には阿波に増兵して移動している。1つの国では1アクションしかできないのでこれが結構重要。
そして、この季節の最後のアクションでCOQ家康は空白地である伊予に侵攻して領土にする。空白地での戦闘は農民と行うことになる。こうして土佐は敵国と隣接しなくなったため、兵力を最低の1とすることができる。同時にJ信玄による讃岐への増兵も行われているのでこの地域は一触即発、刺すか刺されるか。
こうして1つの季節が過ぎ去っていくが、これら一連の手番は、季節の最初に配置した領土のカードを1枚ずつ開けて行くことによって行われる。読み間違えると行動するはずの領土が奪われてしまって何も出来なかったりする。ましてや2年後の状況なんてこの時には誰にもわからない。
果たして勝敗や如何に。
1年目夏 ドドン
ゲームの雰囲気が分かってきたところで少しスピードアップ。
1年目夏、すなわち2フェイズ目がスタート。
そろそろ関東地方も気にしなければならないが、MOG謙信とT秀吉が、信玄をさしおいて争っている川中島の合戦以外はこれといって動きはなさそう。なぜなら、J信玄の2つの国には両方とも農民の不満マーカーがある。これを軍事国としてではなく、生産国としての活用を考えている証拠と見てとりあえずは放置。
ところで、この季節には日本各地で能楽堂の建設ラッシュがあった。建物は得点計算時に有効だから…というわけではなく、イベントカードに能楽堂の建設を行うとその国の不満マーカーを除去できるという理由から。そんな打算的な理由で今、日本各地で能が大流行りという訳。
ここで初めての国同士の戦争が起きる。但馬のMOG謙信がJ信玄の伯耆(ホウキ:鳥取)に攻め込んだのだ!防御側J信玄1に対して攻撃側MOG謙信2の対決。
初めての戦闘解決は5対2でMOG謙信の勝利!入れた数以上に駒がでているのは中に引っかかっていた駒がでてきているから。関係無い色の駒が出てきてしまった場合には次回の戦闘時に中に戻される。個人攻撃になりがちな戦闘だけど、塔のランダム性のおかげでお祭り状態になるので楽しい。ダイスゲームの運命の1投のようで自然とアツくなる。
などと高見の見物を決め込んでいたら、伊豆のT秀吉がCOQ家康の志摩に攻め込んできた!4人プレイなので、他の2人が戦っていれば戦になるのも当たり前なのだが、予想だにしない災難。
防御側COQ2に対して攻撃側Tは4。数はヤバいが、志摩には不満マーカーが無いので農民が見方してくれるはず。汚らわしい紫色の駒と一緒に塔に投げ込まれる志摩の駐屯兵達、はたして!
タヌキ対サルの勝負は運良く転がり出た農民の手助けによって辛くもタヌキCOQの勝利。能楽堂まで一緒に略奪されるところだった、危ない危ない。
敗戦にも負けず、返す刀で安芸から備後に出兵するT秀吉。四国の主たらんとするCOQ家康としては近場で他国が戦闘して疲弊するのは嬉しい展開。
この戦にはT秀吉が勝利し、夏の終わりのジパングはこのような体制となった。COQ家康はまだまだ国力を蓄え、依然四国を狙う。
1年目秋 ドドン
秋がやってきた。当たり前だけど、次は冬。冬にはアクションを行わず、食料消費の処理だけをして次の年が始まる。しかし、米所を押えられなかったCOQの米蔵は寂しい。冬には、イベントカードに書かれた数と、所領の数だけ食料を支払わなくては一揆が起きてしまう。
危うし!ということで、特殊能力には米産出+1を選択。米所を押えている他の軍勢はニヤニヤしながらこれを見守る、悔しス。
米もヤバいので、冬を前にして所領を増やす訳にもいかず、国力の増強を計って冬を待つ。播磨の軍勢はもはや日本一となってまわりに脅威をふりまく。得点計算を見据え、近辺に築城も行う。
1年目冬 ドドン
冬になり、イベントカードによる食料を支払った後の図。COQの所領は10、食料は9、何度数えても食料が足りない!したがって、一揆勃発。一揆が発生した場合には隣りのプレイヤーに領地カードをランダムに選択してもらい、農民と戦闘。
選択されたのは、運良く播磨。強大な軍勢に対し、民のなんともろいことか。
当然、なんなく粉砕して鎮圧。
しかし、この戦闘によって塔内部に駒が相当ひっかかり、播磨の軍勢は痩せてしまった。これはさらに軍事に力を入れなくては。
ここで1年目が終了し、1回目の得点計算。築城効果もあり、1点差ながらトップで折り返し。
2年目突入!
2年目春 ブオ〜
後半戦の2年目がスタート。このあたりになると、それぞれの狙いも際立ち、国力も高まってそこかしこで戦争が勃発して目が離せない。
そんな中、今まで攻められ続けて煮え湯を飲んできたJ信玄が備中からT秀吉の備後へ出兵。
ここぞとばかりに持参した扇子を使用して戦を盛り上げる。転がるように投入される兵士達。
結果、辛くも1兵差でJ信玄の勝利!T秀吉は先の伊豆での敗戦とこの敗戦が響き、次第に衰退していく。「浪速のことは夢のまた夢」、そんな雰囲気が漂い、孤立する秀吉軍。
春の終わり、COQは播磨と志摩に兵隊を集める。本来は、もっと沢山の兵を集めたいのだが、なんとストックの兵隊が尽きてしまった。途中、ストックに兵がいないのに増兵を選択するというミスを犯してしまい、大きな痛手。
ストックがなくなった今、もはや留まる理由は無くなった。2年越しの四国征伐、そろそろ動き出さねば。旨味を感じる前にゲームが終わってしまう。
2年目夏 ブオー
いよいよ終盤、大合戦時代へ。それにしても、今見ると北陸に拠点を構えたMOG謙信は実に有利にゲームを進めている。
手出兵を決めたCOQは迷わず戦で有利になる特殊カードを選択。これをみて周りがどよめく、すわ出兵か。
当然、攻めるは四国讃岐。播磨にはわずか6部隊を残し、ほぼ全軍で進撃。しかも、COQ側には事前に塔に突入している部隊も味方してくれるはず。だれもがCOQ家康の四国平定を疑わない展開。
いざ、海道一の弓取りと言われたその腕を見せる時。
…が、敗退っ! …何度数えても敗退っ!なんと、なんたる戦下手。そうだ、劉備玄徳と徳川家康は実は戦下手で有名なんだった。2年越し、ゲームを通じて暖めていた作戦が失敗。
結果、讃岐は死守されてしまった。
当然、2段構えですよね?違うんですか?
・・・・・
そんな間にも川中島の合戦は続く。意気盛んなMOG謙信とまともにやり合ったT秀吉は大分疲弊している。しかも、先に投入した家康軍の駒がいまさら下皿にじゃらじゃらと出てきた。
こうなったら、ヤケクソで伊豆へ侵攻を決意する。幸い、志摩の周りには敵国が伊豆しか無いので、この戦闘に勝てば、ゲーム終了まで志摩は安泰。全軍を伊豆に投入、T秀吉7対COQ家康9!!
結果は大勝利!大分軍勢も残ったので、以降伊豆を攻めとられることもなさそう。
などと勝利に浸る暇もなく、今度はMOG謙信がCOQの居城がある丹波に攻め込んできた。しかも、わずか4部隊での出陣。トップ目のMOGさんは、城のある丹波が自分でなくともCOQ以外の誰かの領地になれば良いと踏んだようだ。うまい。
なんとか侵攻は阻止したものの、丹波は風前の灯火と化してしまう。J信玄の目がキラリと光るのが見えるようだ。
2年目秋 ブオー
いよいよ、アクションを行える最後の季節。日本地図も大分様変わりし、北陸の雄の独壇場と化してきている。丹波はもはや虫の息と判断し、なんとか四国平定だけでもして、潔く散る準備を整える。「Oh!ブシドーベーリーナイス」と秋葉原の「てんや」で天丼を写真におさめる外人のような台詞を吐く。
結果、伊予からの出兵でなんとか四国の平定には成功するが、丹波は信玄に奪われてしまう。
ただでは終わらじ、と伊豆の軍勢を駿河に向けなんとか関東の中心地をもぎ取る。しかし、同時にマップ最上部の陸奥を能楽堂ごとMOG謙信に奪われてしまう。最終得点計算を前に、入り乱れる合戦の怒号。
果たして、最終得点計算の結果は!
2年目冬 イヨ〜ッ
如何に戦が流行ろうと、冬の食料供出はやってくる。そして、米所の無いCOQ家康の領地ではご多分に漏れず一揆。カードを引いてもらうと、、なんと苦労して平定した四国が二枚!
最終得点計算には兵の数は関係ないので、極力兵を使う方向で動いていたのが大誤算。両方の一揆を平定するほどの国力はもはやCOQには無い。
神社の鳥居ごと、消え去る土佐の支配と四国平定の夢。この一揆で一気に4点を失う。
最終結果、北陸を手堅く治め、建築物を立てまくったMOG謙信の勝利。COQは第一次讃岐侵攻の失敗が最後まで尾を引き、中央での位置を確率することができず無念の敗退。
こうしてアツい戦いに終止符が打たれましたとさ。
プレイ時間:190分
総評
Platinum
面白いです。「ヴァレンシュタイン」も面白いゲームでしたが、手番順などにランダム性があることや、なにより見知らぬ土地であることなどからリメイク作である将軍のほうが日本人には断然オススメ。
このゲーム、何が良いって4人で3時間とかなり重いゲームなのですが、基本的にアクションの選択は同時(すべてのアクションを決定後、順次あけていく)なのでダウンタイムが殆どない。このシステムが素晴らしいです。この同時アクション選択システムが、このゲームの面白さをかなり引き上げていると思います。
また、戦闘に塔を使用するランダム性や、10種あるアクションの順番が次第に明らかになる読み所など、一見ダイナミック過ぎるとも言える様々なシステムが絶妙に絡まり、まとまっているのも印象的。戦国乱世な要素をよくゲームとしてまとめ、しかもここまで面白くしたなと関心します。
重いゲームでありながらも、ルール自体はそこまで複雑でないところもユーロゲームらしくて評価が高くなるポイントです。
この素晴らしいゲームの舞台に日本を選んでくれたことに感謝ししたいと思います。拡張セット「テンノーズコート」は未プレイなのでいつか機会があればチャレンジしてみたいと思います。
ところで、筆者の購入した「将軍」には日本語のルールが元から付いていました。これは嬉しいですね。再販されると良いですね。