数エーカーの雪

「ふん、雪ばかりの数エーカーに過ぎないさ」

ーケベック陥落後のフランス軍
メーカーTreefrog Games
発売年2012年
作者Martin Wallace
プレイ人数2人用
対象年齢14歳以上

ゲーム概要

ワレスの2人専用デッキビルド

冒頭、「Ha, it is only a few acres of snow(ふん、雪ばかりの数エーカーに過ぎないさ)」はイングランド軍との戦いに敗れてケベックを失ったフランス軍の負け惜しみと伝えられている一言。このゲームのテーマはアメリカ大陸を巡る、イングランドとフランスの戦いです。2011年国際ゲーマーズ賞2人用ストラテジー部門で大賞を受賞しているワレス作の2人専用ゲームで、アメリカを巡るイングランドとフランスの戦いがテーマのデッキビルドゲームなのです。

ドミニオン、俺ならこう作るね

このゲームは、ワレスがドミニオンを多分に意識しながらデザインしたゲームと言われています。ゲームはアクション制。各手番、カードの獲得やプレイ、手札の調整等のアクションの中から2アクションを選択し、実行します。基本は陣取りゲームなわけですが、これらで構成される自分専用のデッキ(カードの山札)から毎手番カードを手札に補充し、貿易や徴兵などを行って支配を拡げていくわけです。ウォーゲームとデッキビルドの見事な融合です。

赤はイギリス用、青はフランス用、緑は共通のカード

初期の手札と配置は両陣営で決まっています。フランスはインディアンとの繋がりが色濃く、序盤の展開が勝負。イギリスは資金と強大な軍隊にものを言わせる構成、といったところでしょうか。ここに、自分の資金の範囲内で手に入れたカードを加えていき、独自のデッキを構築していくのがゲームの楽しみの1つです。

デッキの使用方法は、ドミニオンと一緒。手に入れたカードは一旦捨て札となり、山札が枯渇したら全てをきりなおして新たな山札を作ります。この時、初めて自分の選んだカードが山札に加わります。カードの獲得は、共通のストックから緑色のカードをとっても良いし、自分のストックから自分の色のカードをとってもかまいません。

カードリストで紹介されているカード以外にも、各地の土地を表すカードが存在します。これらは、それぞれの土地で行動を起こすのに重要。隣の土地に入植/侵攻する時は、手札から出発地のカードと、目的地へ行く交通手段を示すカードを出す必要があります。

土地のカードには、下部の羊皮紙模様の部分にその土地が持つ能力が書かれています。(写真は、QuebecからKennebecに入植するのに、Quebecとカヌーの能力を示すカードをプレイしている)

敵が既に入植している場所へ侵攻する場合には、「包囲戦」に突入します。各手番、手札から軍事カードを増援に出し、軍事力の綱引きを行います。手番の最初に、マーカーが自分の側にあれば勝利確定です。

また、原住民を巧く利用することにより、奇襲や待ち伏せ等の攻撃を行うことも出来ます。相手が手札の中にこれらを防ぐカードを準備していないと、村を破壊したり、軍隊を離散させたりすることができる協力な攻撃です。

さて、ワレスゲーと言えばお金。お金を貰うには、お金マークのある土地カードをプレイするか、毛皮マークのある土地カードを商人と一緒にプレイするか。陣営によってお金を貰うアクションはどちらかに偏ることになります。フランス軍は、海賊行為を行い、イギリスから資金を奪うこともできます。

こうして交戦を重ね、一定の終了条件を満たした時の勝利点合計を競います。お互いの本拠地が陥落した場合には、即座にゲーム終了です。ゲームの流れは以下のリプレイをみていただくとわかりやすいと思います。

プレイ記

Tさんと2人プレイ。COQはフランス、Tさんはイギリスを選択して開始。

初期配置はこんな感じ。フランスは東海岸の北、カナダからアメリカに望む。対するイギリスは、南側のボストン、ニューヨークからこれを迎え撃つ。

手番では、早速海賊行為を行ったりして突つき合う。お金が得られるのも大きいが、このゲームの手札は消費しないと補充されない。獲得した自分好みのカードは、カードをどんどんひかないと手札に入ってこないので、ガンガンとカードをプレイしていくのが重要。

そして、まずは予定調和で「本国の支援」を獲得。このカードは、ノーアクションで山札から3枚を手札に加えるという強力カード。双方に用意されたカードだが、このカードが手札に来た時がチャンス、と言える程に不可欠なカード。

そして、毛皮商人を使って毛皮マーク付きの土地をお金に換える。ゲームを通して、フランスは毛皮を売って、イギリスはお金マークの土地をプレイして(商売して)、お金を得ることになる。

フランスの強みは、毛皮は何枚でも一緒に売れること。今回のCOQフランスは、この点に着目した戦略をとる。

というわけで、執政官のカードを獲得。このカードはフランスだけにしか存在しないカード。汚職をして、2金を支払うことによって捨て札置き場からカードを1枚釣ってこれるのだ。

このカードを本国のサポートに用い、手札を一気に増やす。うまく行けば、通常五枚の手札が10枚位まで増える。

で、これを毛皮商人に一気に売る。イギリス軍のほうが、単体でお金になるカードが多いことから、資金には恵まれ易いが、この作戦では、取り敢えず資金だけでは負けない。これを繰り返し、潤沢な資金を得るCOQ。

資金が出来たら、次は軍事力。総軍事力ではイギリスに敵わないことは明白なので、史実通りに原住民との関係を密接にする。さらには、「森の走者」という、インディアンの親玉のようなカードも手に入れる。資金にものを言わせ、チクチクと奇襲や待ち伏せで敵の意を削ぐ作戦だ。そして、とっても成金らしい台詞を吐く。

COQ
COQ

金ならあるんだ

すると、イギリス軍が海路を使い、半島に上陸してきた。ここはイギリス軍本拠地を伺う上での最重要拠点。分断されるわけにはいかない。

そこで、Fort Beausejourへ前線基地を敷き、森の走者で奇襲をかける。敵軍の手札にはこれを防ぐ手だてが無く、敢え無く陥落。こうして得られた敵の駒は勝利点となり、これが一定数溜まることが終了条件の1つ。

以後もこの作戦を続行すべく、前線基地を配置しては隣接する相手の土地へ奇襲を繰り返す。さらには、敵が軍事力のカードを手札に入れていそうなタイミングで待ち伏せを行って敵の軍事力を削ぐ。

こうなると、相手は入植前に奇襲を防ぐ手札を用意するか、入植と同時に砦を築くかしか無いが、砦を築くには、その土地のカードが必要。しかし、初めて入植した場合は、土地のカードは入植した時に捨て札に加えられるし、奪われた土地のカードは何の役にも立たないカードとなるので手札に蓄えておくのは難しい。

しかしCOQの手札は、本国の支援によって奇襲体制が万全に整っていたのだった。こうして、相手が無用な土地カードに苦しんでいる間に、軍事力もしっかりと整える。そして、奇襲につぐ奇襲を重ね、ゲームも終了間近。

突出したフランス領にイギリスが包囲戦を仕掛けてきた。

次々に送り込まれる援軍。お互い、一歩も退かない戦いを繰り広げるが、ここでもフランスの汚職がうなりをあげる。捨て札を何でも1枚もって来れるということは、軍隊ももって来れるということ。

こうして戦況はフランス側へと傾き、包囲戦はフランス側の防衛成功で終了。

直後にCOQが終了条件を満たし、得点計算。序盤の毛皮売りと奇襲作戦がうまく繋がったCOQの勝利。

COQ:53 T:17

プレイ時間:90分

直ぐに2戦目を行い、今度は手札の圧縮に挑戦。圧縮が過ぎてしまい、資金繰りがショートしたフランスは、Tさんイギリスの植民地政策に敢え無く敗退。この日は1勝1敗でした。

総評

Silver

Board Game Geekにもワレスは天才だという文字が踊る。これは確かに面白い。ウォーゲームとデッキビルドの絶妙なマッチング。デッキビルドが一般化した現在ではインストも楽。イギリスとフランス、これらの国の初期配置や、カード構成が違うというバランスはドイツゲームというよりもウォーゲームよりのデザインと言えますね。

これに、カード運の揺らぎが加わるわけですが、カード運もデッキの圧縮やカードの選択によりある程度制御することができます。この辺りには、ある程度の慣れが必要であり、自分の戦略を見つけたり、試したりすることに幾度かのプレイが必要だと思います。しかし、これは同時に自分のプレイの成長を感じながらプレイすることが出来るということであり、これまた面白さに繋がっていると思います。また、カードの種類はそれなりにありますが、突飛な効果を持つカードはあまり無いので、胃が痛くなるようなギリギリの打開策を打ち出したりという思考が楽しいです。

欠点らしい欠点は無いのですが、唯一、中盤中だるみする瞬間。ある程度自分達の狙いが達成された後で、瞬間的に手番を無駄にまわしている時があるように感じる時があります。10回くらいしか遊んでいないのでもう少し検証が必要ですが。あと、このゲームは(少なくともイギリスは)戦争を仕掛けるのが前提のゲームのような気もします。この辺りを意識すると、スピーディでエキサイティングなゲーム展開となるのではないでしょうか。

非常にシンプルなルールでユーロ風ウォーゲームを楽しめる良作です。普段マルチゲームやウォーゲームはほとんど触らない筆者ですが、2人用なので楽しめました。

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