クアックスと仲間たち

キッズ用クアックサルバー

メーカーSchmidt
発売年2022年
作者Wolfgang Warsch
プレイ人数2-4人用
対象年齢6歳以上

ゲーム概要

ゲームとしての完成度ゆえに大賞受賞を逃したキッズ用レースゲーム

2022年のキッズゲーム大賞候補作の1つ『クアックスと仲間たち』です。名前の通り、同作者のバックビルディング・バースト系ゲームの名作「クアックサルバー」のキッズチューンである本作は、本家と同様のメカニクスにレースゲームのテーマをのせた作品。本作はゲームとしての完成度が高く、ゲーマーも楽しいキッズゲーム枠ですが、残念ながらキッズゲーム大賞に輝くことはできませんでした。どうやら、キッズゲーム大賞にはゲームとしての面白さよりも、プリミティブ(原始的)な体験としての楽しさの方が優先されるようです。過去の受賞作を顧みても、一緒に遊ぶ大人も楽しいゲームというよりは、「スピンデレラ」や本年の「魔法の山」のように、ゲームをすることよりも現象を楽しむタイプのゲームが受賞作となっています。筆者は候補作3作のルールを読み、その面白さの期待値から賞レースを制するゲームはこれと確信してわざわざドイツから輸入したのですが、今年も見事に外してしまいました。ルールだけ読むと、6歳の子供には複雑かもしれないとも思いましたが、5歳児や”お年を召した方”とも遊んでみましたのでその辺りも含めてレビューします。

テーマはお祭りの動物レース

このゲームのテーマはお祭りで行われる動物レースです。自分の駒を一番最初にゴールに辿り着かせたプレイヤーが勝利します。手番では、自分の布袋の中からチップを1つ引きます。引いたチップに記載されている数字の分だけ自分のコマを進め、その後にチップ特有の特殊アクションを実行します。運よく「渦巻き」マスに止まっていたなら、アクションが少し強くなります。基本的にはこれだけです。引いたチップは動物の餌にするフレーバーとなっており、とてもわかりやすいです。

チップの野菜を動物に食べさせて進む

ゲームが進むと、布袋に自分でお買い物したチップを追加していくことができます。いわゆるバックビルディングして、自分の戦略に沿ったチップセットを構築し、いち早くゴールを目指すわけです。ただし、「夢の草」と言う黒いチップを引いてしまったら、その手番は動けずに終了です。この黒いハズレチップが緩〜いバーストのような役割を果たしています。このハズレチップが3つ溜まるとこれまでに引いたチップを全て袋の中に戻してリセットします。効率的な移動は、ハズレチップを3つ引くまでに如何に当たりのチップを多く引くかにかかっています。

キッズが楽しいゆるバーストメカニクス

バーストメカニクスとは、自分の意志でアクションを重ねていき、何かしらの発現やその累積で手番を終えなくてはならないシステムのことです。例えば、「トランプのカードを1枚ずつめくっていき、絵札が3枚出たらドボンという条件下で、ドボンせずに何枚カードを捲れるか」というようなものです。あと1枚引けるかもしれない!という伸るか反るかの勝負に一喜一憂するわけです。しかし、ドボンで手番が没収されてしまったり、不利になったりすることに子供が対応するのは感情的にも少し難しい場合があるでしょう。

3つの吹き出しが夢の草で埋まったらお買い物タイム

そこで、このゲームでは、自分の意志で何枚でもチップが引けるという部分は排除して、(特定のチップの効果を除き)手番ごとに引けるチップの数は1枚とし、動くことができずに手番が終了するハズレチップを採用しました。つまり、1手番ごとのバーストメカニクスではなく、数手番を通してのバーストメカニクスというイメージです。その分ギャンブル要素は薄くなっています。

そして、手番が終了する「夢の草」を引いたとしてもそれ自体に意味を持たせています。すなわち、手番が終了してしまう「夢の草」が3つ揃うとお買い物ができるのです。前述の通り、このゲームはバックビルドで自分専用のチップセットを構築していきます。逆に言うと、「夢の草」を3つ引かないとお買い物が出来ないので、場合によっては早く「夢の草」が引きたいですし、手番がストップしてしまっても3つ溜まればお買い物ができるのでそこまでショックではないのです。キッズゲームとしてここは重要な味付けであったと思います。

お買い物とバックビルドの成長が楽しい

このゲームの内箱は、ゲーム中に購入可能なチップを並べるお店のようになっています。「夢の草」を3つ引いたプレイヤーは、これまでに集めた宝石を使用してお買い物をすることができます。この時、最下位のプレイヤーであったなら宝石1つのおまけも貰えます。子供たちはお買い物ごっこが大好きなので、このお買い物タイムだけでも十分に楽しいようです。また、買ったチップによって成長するバックビルディングの要素が楽しいのは説明不要でしょう。

内箱がお店になっている

自分の戦略に沿って購入したチップでデッドヒート繰り広げたら、それはもう楽しいに決まっていますね。

ダイコンボーイだけが生き残る

レースは、宝石のもらえる「りんごチップ」3つ、ボーナスダイスを振ることのできる「とうもろこしチップ」1つに「夢の草」を4つ加えたデッキで静かに始まります。序盤はりんごチップで宝石を地道に貯めていき、より上位のチップを購入することを目指します。

最初のチップセット

チップは全部で7種類あり、ゲームごとに採用するチップを選択可能です。また、それぞれのチップに2つの効果が用意されており、ゲームごとに選択可能です。初級用と上級用がある感じ。ワープ効果のあるものや、お買い物時に追加移動ができるものなど様々ですが、中でも皆の視線を集めるのが最も高価な宝石5つの「ダイコン」。特殊能力はありませんが、超特急で盤上を進むことができます。この効果は子供にもわかりやすく、劇的に勝利することができるのでとても人気ですし、実際強いです。子供と遊ぶ時は、敢えて大人はダイコンを購入しないなどの手加減も自然に可能ですね。

6種類+ダイコン

こうしてバックビルドしたチップを引いていき、最初にゴールしたプレイヤーの勝利となります。

プレイ記

えりえり、タナカ〜マ〜店長、ジョーコデルモンダーあきおおじいちゃんと4人プレイ。

えりえり
えりえり

おじいちゃんも楽しいクアックサルバーだね!

あきお
あきお

すまんのう…えりさんや、ご飯はまだかのう?

COQ
COQ

ご飯はさっき食べたでしょう?

”お年を召した”あきおさんに合わせてシンプル&ファンの本作をチョイス。チップは全部入り、効果はCOQ以外は全員初見だったのでシンプルな方を採用。

序盤はいつも通り静かな立ち上がりで如何に宝石を溜め込んでからお買い物タイムに突入するかの勝負である。差がつき始めるのは各自のお買い物タイムが終わり、バックの中身がリセットされてからだ。

タナカマ
タナカマ

これいいですね、クアックサルバーこれでいいんじゃないですか?

序盤先行するCOQだが、お買い物タイムに入るときに最下位だと宝石が1つ貰える救済ボーナスが序盤は効果的なのであまり良い展開ではない。COQはとうもろこしでボーナスダイスを振り、追加手番を狙う作戦。そして、出遅れたあきおさんは溜め込んだ宝石を活かしてダイコンを買っていく。

とはいえ、そこまで多くのダイコンは購入できないのでバックの中にはダイコン2つ。それなのにダイコンを引きまくり、一躍トップに躍り出るジョーコデルモンダー。

COQ
COQ

これは…やってますね?

えりえり
えりえり

やってるね…

すかさず袋を奪い取り、程よくミックスすると、そこから暫くは引けなくなり、みんなが追いついてくる。

あきお
あきお

やってへんわ、余計なことすんな、引けんくなったやろが!

バックビルディングゲームの定番のやりとりである。これが気軽にできる気の置けない友人と遊ぶとさらに楽しいゲームとなる。

しかし、そこから運を引き寄せる剛腕を見せたあきおさんが後続をぶっちぎって勝利。正にダイコン老人のみが生き残る展開となった。

タナカマ
タナカマ

ダイコン食べると足が早くなるよって教育に使えますね。

総評

Bronze

とても良くできたゲームです。お買い物したバックビルドでレースゲームが楽しくないわけありません。お手軽ですが、楽しさのエッセンスが凝縮されています。そのゲームとしての完成度ゆえにキッズゲーム大賞の選考基準にはマッチしなかったのかもしれませんが、ゲームとしての面白さはとても優秀だと思います。お手軽クアックサルバー。

我が家の5歳児はこのゲームのルールを1度の説明で完全に理解できたようです。夏休みの間このゲームを持って帰省し、老夫婦にインストして一緒に遊んでいました。ルールが少し複雑なのではないかと危惧しましたが、ゲームをしながら段階的にチップの種類を増やしていくことですぐに彼のお気に入りの1作に加わったようです。筆者も10回以上遊びました。

キッズゲームということで、運重視、短時間でいつも楽しいという部分(シンプル&ファン)に特化しており、深い戦略性までは期待するべくもないのですが、手軽なバックビルドレースゲームとして中々の良作です。大人も楽しく遊べるゲームが良いキッズゲームというスタンスのTBGL的にも良作だと思います。バックビルディングメカニクスの入門用としても良いですね。

購入先情報

現在のところ輸入するしかないようです。筆者はドイツアマゾンから購入しました。

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