“西海岸に来て、一緒に笑って過ごしましょう“
メーカー | Rebel Studio |
発売年 | 2022年 |
作者 | Reiner Knizia |
プレイ人数 | 2-4人用 |
対象年齢 | 12歳以上 |
ゲーム概要
クニチーが左手で繰り出すコロレット風カード配置ゲーム
ポーランドのメーカーから発表された2022年クニチーの新作『サンフランシスコ』は、サンフランシスコ各地の特徴を模した爽快なアートワークのカード配置ゲーム。どこかで見たメーカーと思ったら「K2」を発売していたメーカーでした。プレイヤーの目的は「都市計画者として、優れたサンフランシスコの再開発プランを提示する」ことです。5つの区域に分かれたサンフランシスコの街に5枚ずつのカードを配置していき、高層ビルを建築して価値を高めていきます。カードの獲得方法にシャハトの名作「コロレット」のシステムを取り入れた軽・中量級のゲームです。
淡い色合いのサンフランシスコ
今や世界一暮らすのにお金のかかる州の一つとなったサンフランシスコの街を表すボードは、特徴的な5つの区域に分かれています。特徴的と言っても現実世界の話で、ゲーム中は色以外の特徴は殆どありません。
カードもこれらの各地域に対応して5種類(+オールマイティ1種類)の属性を持っていますが、派手な特殊効果のようなものはなく、属性はどの行に置けるカードかを決定付けるに過ぎません。カードに記載されている情報は:
程度の簡単なものです。取得したカードはそれぞれの行の色に整合するように左詰めで配置していきます。各行で最初に5枚のカードを配置したプレイヤーには達成ボーナスの1勝利点が配布され、さらに、ゲーム終了時に各行の作業員の値の合計値の順に勝利点が配布される様になっています。
高層ビル!
このゲームの華は高層ビル。これを建てることを主な目的としてカードを配置していくことになるでしょう。自分のサンフランシスコに高層ビルの建築予定地を持つカードを配置した際、縦横に隣接する4枚のカードの値の合計が7以上であれば、自動的に高層ビルが建つルールとなっています。高層ビルは1つ1勝利点となります。これを狙うことは、ゲーム終了時の各行の値を高めることと方向性が同じなため、基本的には高層ビルの建築を指針にゲームを進めていくことになるでしょう。
サンフランシスコといえばケーブルカー
サンフランシスコを訪れたことのある方であればご存じと思いますが、サンフランシスコの起伏は激しく、移動には街中を走るケーブルカーの利用が便利です。このゲームでもその特徴を活かしており、一部のカードに記載されている線路を車庫から繋げることによって黄色が鮮やかなケーブルカー駒を配置することができます。ゲーム終了時、駒の数の順位によって勝利点を得ることができます。
Tips!:スタートプレイヤーの選定条件は「最近ケーブルカーに乗ったプレイヤー」なので、国際派でマウントを取りたいあなたにオススメです。
メインメカニクスはコロレット
ここまで説明してきたところでやっとメインとなるカード取得のメカニクスを語れます。このゲームの根幹はシャハトの名作「コロレット」のそれです。手番では「カードの山から1枚引いて3つのカード列のいずれかに置く」か、「1列のカードをすべて引き取る」かのどちらかを必ず実行します。「コロレット」ですね。ただし、本作ではカード列を引き取る時に契約書トークンが1つ付いてきます。そして、引き取ることのできる列は、カード枚数が保有している契約トークンよりも少ない必要があります。
このルールによって、安易に列の取得ができないことに加えて、しゃがみ続けたプレイヤー(契約書トークンの数が少ないプレイヤーが)が場のカードをコントロールするような展開が生まれます。契約書トークンを全員が1つ以上持っている場合には契約書トークンを1つ場に戻すというルールがあるので、必ず1名以上の契約書トークンを持たないプレイヤーが存在する展開となります。
「コロレット」は取得したカードを捨てることができず、色を増やしすぎると失点という厳しいルールでしたが、本作ではその点は緩和されていて任意のカードをノーペナルティで捨てることができます。安易に契約書トークンを取りたくないという部分でゲームを引き締めているのです。この点は若干緩いとはいえ、カードを置く際にはやはり「コロレット」と同じく他者が得しないような組み合わせを必死で探して置くことになりますね。
各列のボーナス
各列に2つ目のコンパスシンボル付きのカードを置いたプレイヤーは直ちにその列特有のボーナストークン(カード)を取得することができます。1.5勝利点となるトークンや、カードの値が2倍となるトークン、値4のどこにでも置けるカード、手番中に契約書を2つ破棄できるトークンなど、ゲームを有利に進められるものばかりです。
都市計画の評価はシブい
このゲームの勝敗を決するのはサンフランシスコ再開発計画の出来なワケですが、その評価方法は近年の特殊効果満載ゲームと比較するとかなりおとなしめのシブい仕上がりです。その得点源は:
のみで、勝者の最終得点は10点台となります。実は筆者はこの点はすごく評価しています。クニチーらしくない細々としたルールがあるものの、最終得点計算はシブくまとめてきたところでこのゲーム全体の印象をよくしていますね。
こうして規定数の高層ビル建築予定地のカードが出現するか、いずれかのプレイヤーが25枚のカードをすべて置ききるとゲーム終了となります。
プレイ記
スバルさん、しんさんと3人プレイ。
COQは序盤からカードを獲得していき、各列の置ききりボーナスを総ざらいする作戦。しかし、いきなりカード配置で失敗。値の高い(3)カードを街の端に置くという失態である。
他者がカード獲得を控える中、どんどんとカードを配置していく。高層ビルの建設予定地も2つある。
目論見通り、上から2段目のカードをいち早く置ききり、値4のオールマイティカードを獲得するや、2ヶ所の高層ビル建設予定地に隣接するように置き、高層ビルがエレクチオン。中々に映えるコンポーネントである。ここにあきおさんがいれば、熱いエレクチオン話が聞けるところだが残念ながら不在。
これはビルド(建つ)ではなくエレクチオン(勃つ)と表現するのが適切なんや
しかし、飛ばし過ぎたCOQに対して下家のしんさんがほとんどカードを取得しておらず、契約書の溜まったCOQは以降全くカードを取得することができずにただのカードめくりマシーンとして活動させられている。その間、スバルさんがうまくケーブルカー線路を繋ぎながらジリジリと迫ってきた。
契約書トークン数より少ないカードの列は取れないため、4つも契約書を持っているCOQはこの様子でもカードの取得ができない。しんさんはじっくりとカードの列を見ながら時期を伺う。こうして契約書トークンの少ないプレイヤーが場を支配するのがこのゲームの常である。
それでもなんとか3つ目の高層ビルを建て、下から2段目のカードを1枚埋めればゲーム終了まで漕ぎ着けるものの、ここからこの色のカードが出ない。出てもカットされる。頼みの綱は、上家のスバルさんがこの色のカードを引いていずれかの列に置かざるを得ない展開である。
しかし、カードが出ない。当然その間にじっくりとカードを吟味した2人が追いついてくる。そして、カードを置ききる終了条件を満たせないまま、山札から規定枚数の建設予定地が出てしまいゲーム終了。勝者はスバルさん。しんさんは吟味に吟味を重ねただけあってケーブルカーのネットワークはダントツであったが、高層ビルを1つしか建てることができずに2位。COQはカード運もあって逃げ切り戦術が失敗してビリ。
プレイ時間45分
総評
Bronze
Kniziletto(クニツィレット)!!
爽やかなアートのカード配置ゲームです。メインメカニクスはコロレットなので、面白さの土台は保証されていますが、同時に他のプレイヤーの動向を見る必要性は強めです。カードを捲るたびに他者のボードを見回してできるだけ誰も得しない列に置こうとします。その後のカード配置もありますし、プレッシャーのあるゲーム感が楽しめます。
ただし、コロレットの場合はマイナスとなるカード配置がありますが、本作は要らないカードをノーペナで捨てられるのでコロレットの方がより厳しく切れ味の鋭いゲームだと思います。一方、インタラクション要素という意味ではカード配置後にも値の比較や早取り要素があることから本作の方が優位でしょう。同様のメカニクスを採用していますが、プレイ感は異なります。完成する箱庭は楽しいですし、より現代的なのは本作でしょう。
タイル配置やカード配置のパズル性のあるゲームは近年広く受け入れられる傾向があるのでその点ではモダンな着地点なのかもしれません。このモダンな着地点に到達するために追加された細々としたルールにはクニチー色が薄い気がしますが、よくバランスがとられているので全体のまとまりは良いです。カード引き運は強めですね。得点システムがシブいことは気に入りました。短い時間で悩ましさとパズル性が楽しめるKnizilettoとして、悪くない出来のゲームだと思います。
このゲームは交渉プレイ時間45分なのですが、初見のゲームで見事に45分で終わりました。筆者がTwitterで紹介している45分ゲームズの仲間入りですね。