発売年 | 2023年 |
作者 | Michael Modler |
プレイ人数 | 3-6人用 |
対象年齢 | 8歳以上 |
ゲーム概要
5〜6人集まったらカバンガ!
少し前から噂は耳に入っていて、日本の流通はいつかな?と思っていたら日本語版が発売されたカードゲーム。そう、『カバンガ!』である。国内流通が最初から日本語版ということで、メーカーの本作への期待が伺える。その期待通り、本作はファミリーゲームに求められる要素を満たした新たな定番ゲームの一角になりそう。人数が多い方がその真価を発揮し易いので、これからは「5〜6人集まったらカバンガ!」を合言葉にしよう。
気は抜けないけど反射神経はいらない!
本作は、いわゆるゴーアウト系のカードゲームで、いち早く手札のカードを出し切ることを目指すゲームである。誰かの手札がなくなった時、他のプレイヤーの手元に残っているカードのマイナスシンボルの合計が各自のマイナス得点となり、マイナス18点に到達したプレイヤーが現れたらゲーム終了となる。マイナス点は、出し易い中央付近のカード程大きくなっている。
カードは4色、1〜18で各1枚ずつを用いる。手番では、手札からカードを1枚、対応する色の仮面カードの隣にプレイする。カードをプレイすることで、その色のカード範囲が指定される。例えば、赤の隣に元々16と8が置かれていたとして、8の上に13をプレイすると、赤の13〜16の範囲が指定されたことになる。
他のプレイヤーは、手札にこの指定の範囲内のカード(この場合は赤の14か15)があれば「カバンガ!」と叫んでカードを捨てられる。カバンガされると、手番のプレイヤーは、他プレイヤーが捨てた枚数と同数のカードを山札から引かなくてはならないので手札が減るどころか逆に増えることもある。
また、直前のプレイヤーと同色のカードをプレイする場合には、ペナルティとして山札から1枚引かなくてはならない。他のカードでは範囲が広すぎてしまう場合には、苦渋の選択してペナルティを甘んじて受ける選択が必要な場合もある。こうして、手番の終了時に手札のなくなっているプレイヤーが現れたらラウンド終了。ルールは実にシンプルである。
ちなみに、カバンガ!してカードを捨てるのは必須ではないので、次の自分の手番のために手元に残しておきたいカードを出さないという選択肢もある。なんとか手札をコントロールして、できるだけ範囲が狭くなるようにカードを出していきたい。
大人のカバンガ、様々な技
カバンガ!の面白いところは、次のプレイヤーの手番となるまでの間に、その範囲のカードを持っている全員のプレイヤーが(望むなら)「カバンガ!」と叫んでカードを捨てられるところにある。これは決して反射神経のゲームではないのだが、一瞬たりとも気が抜けない。もちろん、特に変化をつけずに淡々とカバンガ!を宣言して遊ぶのも面白いし、ファミリーゲームならその方が良いのだが、人と対面で遊ぶアナログゲームならではの楽しみがこのゲームには詰まっている。少し遅れて(しかし、次の手番が始まる前までの絶妙なタイミングで)カバンガ!を宣言したりすることで、ある意味、非常にイヤらしいゲームとなり、変な盛り上がりの側面を魅せる。いくつか、その多様なカバンガ!をリストしておこう。もちろん、気心の知れた仲間と遊ぶ場合に限られるのは言うまでもない。
プレイ記
気心の知れた仲間と6人プレイ。
最近流行りのカードゲーム。ともすれば機械的に最も範囲の狭いカードをプレイしていくだけのゲームにもなってしまうが、ある程度既出のカードを記憶しておくことや、手札のマネジメントである程度どうにかなる時もある。ここぞという時の勝負の一手はドキドキするし、とにかく盛り上がる。
序盤は皆、手札が8枚から始まるため、よほど運が悪くなければそこそこ安全なカードプレイが可能だ。当然COQも7−8のような全く「カバンガ!」される隙のないカードプレイを心がける。
全く面白みのない大人のような堅実なプレイですね!
何を言われようと関係ない。カードゲームは闘い、勝つことのみが善である。しかし、勝負所は安全なカードが枯渇してきた中盤以降に訪れるのが常である。次第に隙を見せざるを得なくなるのだ。
じゃあ、青の7−9で
脇が甘いですね〜、カバンガ!
まさにアイコン通りのこの顔、勝ち誇った顔で「カバンガ!」をしてくるニクいやつだ。この辺りから、カードを出すたびに緊張の糸が張り詰める。少しでも隙があると、ちらりとこちらの様子を目で追ったり、手札を不必要に触ったりしてアピールしてくる周到ぶりである。皆、多彩なカバンガの技を披露する機会をうかがっている。
…ふぅ(ホッ… 通った!)
若干の間があり、次のプレイヤーがカードをプレイしようとする直前、、
カバンガ!
ヒッ…!
あー、忘れてました僕もカバンガ!
もう、これでもかと言うほどイヤらしい。ミスターHに至っては、もはやカバンガを宣言することで目がイッており、スローカバンガをキメては街中の不良が下から覗き込んでイチャモンをつけてくるように無理やり勝ち誇ってくる。
とはいえ、2ラウンドの後、手札をコントロールして端っこのマイナス点の少ないカードのみを残していたCOQは同点1位で勝利。おおむね手札運だが、思考と勝負所が適度にあり、盛り上がって楽しい。
プレイ時間20分
総評
Silver
非常に軽くて盛り上がるゲーム。古き良き時代のドイツカードゲームはこうだった。さすが、俺たちのアミーゴカードゲームだ。今回のレビューでは少々悪ノリをしてイヤらしい大人のプレイに触れているものの、このような遊び方もできてしまう懐の深さがアナログゲームの良い所。普通にプレイしても、ダウンタイムなく全員が常に集中している必要のあるゲーム性で、勝負とそれを打ち砕く「カバンガ!」の発声で盛り上がらないはずがない。これは面白いと言うより、楽しいと表現した方が良いかもしれない。
基本的には、範囲が狭まるように出していくが、これまでに出されたカードの記憶や先を見据えた手札のマネジメントでなんとかできる(気がする)部分もあるのが良いところ。ファミリーゲームに筆者が求める「わかりやすさ」、「盛り上がり」、「適度の思考性」、そして大いに笑って終われる「適度な運の要素」を兼ね備えた新定番足り得るゲームになっている。
プレイ人数が増えることで「カバンガ!」の待ち受けも必然的に増えるため、多人数でのプレイで真価を発揮するゲームと思われる(3人程度だとカードが出し易過ぎる時がある)。したがって、可能であれば5〜6人位でのプレイがおすすめ。1点、注意は箱に記載の2〜6人用は誤植で、本来は3〜6人用な点だ。
とても気に入ったので筆者は2箱購入して、スリーブなしでガシガシ遊ぶことにしている。全員集中しているけど反射神経のゲームじゃない、わかりやすくて盛り上げるカードゲーム。シンプルプレイ故に、様々な掛け合いが発生し、「俺の心はいつもオープン!」などと宣言して範囲の広いカードを出し、様々な「カバンガ!」をくらって憤死する。これだけ書いておいてなんだけど、爽やかなファミリーゲームとしても傑出した存在でオススメです。