なぜミープルを振るかって?だって、その方が熱いだろう?
メーカー | AEG |
発売年 | 2023年 |
作者 | John Clair |
プレイ人数 | 2-4人用 |
対象年齢 | 14歳以上 |
ゲーム概要
AEGからキックスターターを経て発売される予定の「ローリングハイツ」です。このプロジェクトは2022年2月25日10:00(UTC)に締め切られる予定ですが、クラウドファンディングプロジェクト開始わずか18分後にファンド到達を成し遂げたという人気プロジェクトです。デザインは「キュビトス」などで既に信頼を得ているJohn Clairが担当しており、このゲームのルールも基本をきちんとおさえている好印象があります。
発売前なので実際に手に取って遊んだわけではありませんが、公開されているルールブック、作者のデザイナーズノートなどを参考に、キックスターターや、商品化された際の購入の検討に役立つ情報を記載しておきたいと思います。
ゲームの目的と背景
ゲームの舞台となるのは1920年代。会社を設立し、ゼネコンのキャリアをスタートしたばかりのプレイヤー達は、急速に拡大する大都市の建設でライバル達と凌ぎを削る。労働者をうまくやる気にさせてこの競争に打ち勝つのは誰だ。
ルールブック冒頭より
というのが大まかなストーリーです。ゲームでは、これから高層ビル群が建設される土地に自分の建設計画タイルを配置し、ミープルをダイスのように振って得たリソースを使ってニョキニョキとビルを建てていきます。公開されている全体目標3つと秘密裏に配られる個人目標がゲームを進める上での指針となります。リプレイ性はありそうです(妙に強い個人目標がないといいですね)。
プレイ人数に合わせたメインボード
メインボードは両面仕様のモジュラー方式となっています。そして、プレイ人数に応じて表裏を何枚ずつ使うかが決まっています。これにより、プレイ人数に合わせたメインボードを使用することができるようになっています。どの程度効果的かはわかりませんが、2人でも遊べる調整がされていることは良い点です。ゲーム開始時には最初の建築計画タイルを手番とは逆順に1枚ずつ置いていきます。手番順の有利不利もある程度調整しようという試みですね。
このゲームに出てくるリソース(木など)はプラスティック製です。真四角ではなく、重ねられる構造(レゴのようにピタリとははまりませんが)になっており、これを積み重ねることで高層ビルの建設をしていきます。
このゲームの懸念点の一つとして、ルーズに積み重なっているビルがテーブルが揺れた時に倒れるのでは?と誰もが思います。私も思いました。
実際のところはどうなんでしょう:
作者もその点は気にしたそうです。しかし、実際にテストプレイをしてみると、特に大きな問題は発生しなかったようです。逆に、レゴのようなタイトなものを使用してしまうと、少しの揺れで倒れるようになってしまうみたいですね。また、タイトなものは積み重ねる時に力を入れなければならないので、それもビルの密集する狭い場所でやるにはあまり良くないと考えて、今の仕様に決定したそうです。ゲーム中に4回倒れるものを1回15秒で直すか、1回倒れるものを30秒で直すかのうちの後者を選んだと。
このゲームの見どころ、ミープルロール!
このゲームでは、ダイスを振る代わりにミープル(人型の駒)を各自の箱(ダイストレイ)の中で振ります。振った後の人型の駒は3種類の姿勢のいずれかを取っているとみなされ、労働者の状態を表します。
ちょうど3つしか目のないダイスを振っているような仕組みです。ミープルのやる気によってその後にできるアクションの強弱が決まります。
作者は、ミープルロールはこのゲームの最も重要な部分ではないものの、多くの人が大きなウリの一つだと認識するであろうことに言及しています。なぜ、彼はダイスではなくミープルを振らせるゲームにしたのでしょうか。また、なぜ箱の中で振らせるのでしょうか。
その理由は:
・ミープルを振って労働者として仕事をさせることにストーリーの一貫性があるから
・6面ダイスのように、完全に確率が分からないから
・箱の中で振らせることによって、ある程度狙った姿勢のミープルを出すコツを楽しんでほしいから
などがあると語っています。これによって、バースト運試しという熱いシステムを組み込んだこのゲームの大事な場面で「33%の確率ででるかどうか!(失敗した時に33%を引けなかった)」ではなく「俺ならやれる!」という体験をして欲しかったということのようです。
ラウンドでは、各自4つずつのフェーズを実行
ラウンドごとに各プレイヤーは4つずつのフェーズを実行します。1と2フェーズは自分の番が来るまでに済ませておくことができるので、ダウンタイムは少なくなると思われます。
ダイス(ミープル)ロールとバースト運試し、エンジンビルドとリソースを使った立体的な都市建設と面白い要素がたくさん詰まったゲームです。ミープルを獲得していくことにより成長するエンジンビルドで獲得できるリソースが、タイルの購入・配置のコスト・ビルの建築資材のすべてに利用できるところも良いと思います。
最初のデザインでは、お金を生み出す能力を持ったミープルがいたそうです。お金は建設計画タイルやリソースの購入に使用できるはずでした。しかし、お金があることによってゲームが終盤に向かうにつれてリソースを生み出すミープルとの効率の差が問題となることが懸念となり、思い切ってお金を無くして、それぞれのリソースにお金の役割も持たせてみたらうまくいったということです。ゲームに必要なテーブルのサイズも小さくなったというオマケもついてきました。
ゲームの終了条件と得点計算
リソースのうち1つ以上が枯渇したらゲーム終了のトリガーが引かれます。そのラウンドを最後のプレイヤーまで手番を実行した後、もう1ラウンド実行してゲームは終了します。枯渇してしまったリソースには、ゲーム終了まで別途付属している代替の駒を用います(リソースが枯渇して困ることはありません)。最終得点計算をして、最多得点者が勝利します。
公称の60分で終わるかどうかは抜きにして、ミープルエンジンビルドとニョキニョキとできていくビル群が楽しい中量級のゲームに仕上がっていると思います。
このゲームには、当初ルート構築の要素も入っていたようです。例えば、通勤経路を構築すると勝利点が入るような。作者はこの仕組みが戦略性を高めるものとして削除するのに抵抗していましたが、テストプレイヤーの意見を尊重して削除してみたところ、面白さはそのままに、エンジンビルドと立体的な建設をシンプルに楽しめるゲームになったと感じたそうです。
総評
いかがでしたでしょうか。今回、私自身もキックスターターのバックを検討したことから、せっかくなので情報を共有させていただきました。最後に、いくつか懸念点もあるのでそれを記しておきます。
日本での発売を待つのも一つの手ですよね。
最後の1ターンの勝負でバースト覚悟でミープルロールするときが一番盛り上がりそうだけどどうだろう。ちなみに、市長が相手をしてくれるオートマソロルールも公開されています。
購入先情報
未発売