少年よ、モアイを抱け!
メーカー | KOSMOS |
発売年 | 2011年 |
作者 | Klaus-Jürgen Wrede |
プレイ人数 | 2-4人用 |
対象年齢 | 10歳以上 |
ゲーム概要
あのカルカソンヌをデザインしたデザイナーが贈るカードゲーム「ラパヌイ」の紹介です。
モアイは、君の理解する以上に栄光に満ちている…
「カルカソンヌ」でSDJの栄誉に輝き、ユーロゲーム史に大きなインパクトを与えたユルゲン先生。その功績は計り知れません。僕は、ユルゲン先生のお宅の位置を確認してから自宅のベッドを配置しました。足を向けないようにね。そんな先生、カルカソンヌ以降は主に同作の派生に力を注ぐ日々で、カルカソンヌの冠の付かない作品には鳴かず飛ばずのものが多かったのですが、ナイスなカードゲームを出してくれていました。あまり話題になっていないので、少し紹介します。
モアイは造るものではない!運ぶものなんだ!
何を隠そう、このゲームはモアイを造るのではなく、運ぶゲームです。みんなで力一杯叫びましょう。「モアイは造るものではない、運ぶんだ!」と。
これがコンポーネント。丸太チップ、得点チップ、捧げものカード、捧げものをする岩タイル、人物カード、そしてサマリーカード。 サマリーカードはドイツ語満載で大学のドイツ語の成績が「可」だったCOQの役には立たない。
ゲームでは、木こりや狩猟者、司祭等を自分の村に招き入れ、丸太、食料そして勝利点を獲得します。獲得した丸太を投資してモアイを村へ運び(丸太が材料だからモアイは造れないよね?)、新しいモアイの到着を祝って行われる祭で食料を捧げます。ゲーム終了時、捧げられた枚数が多い食料ほど得点が高くなります。…と、こんなゲーム。
人物やらモアイやらの「ラパヌイカード」イチモツではありません。モアイです。
カードのイラストは中々に美しい。そして、サイズはユーロサイズで嬉しい。ちまちましたミニユーロカードでモアイのゲームなどやっていられない。
カードに描かれているのは村に招き入れるメンバーの皆さん。木こりから、映画「アウトブレイク」の冒頭に出てきそうな司祭まで、多彩です。これらを手札として持ち、自分の手番で自分の前に1種類出すことができます。4種ある狩猟者はそれぞれの食物に対応しており、捧げものにする食料を手に入れるのに重要です。同じ種類のカードは3枚まで一気に出せます。出すためのコストは丸太で支払います。丸太でコストを支払うくらいなので、モアイは建てるのではなく、その辺に転がっているどこの馬の骨ともわからないモアイを丸太で運んで来るのです。
ドイツ語のサマリーカードは役に立ちませんが、カードに記載されたアイコンがゲームの手助けをしてくれます。基本のルールさえ頭に入ってしまえば、プレイに困ることは無いでしょう。
イソギンチャク、永遠の謎という名のロマン
絶対イソギンチャクだよね?
こちらは残念ながらミニユーロサイズのゲーム中に捧げものとして扱われる「捧げものカード」。木の実(イソギンチャク)、麦、魚、サツマイモです。これらのカードは山札として用いるのではなく、表向きに種類分けして置き、共通のストックとします。岩の様な形をしたタイルは、ゲーム中に捧げものが捧げられる時の標的です。不要と言えば不要のコンポーネントですが、目標があると自然と狙ってしまう性質を突いたトイレのアレと同じでナイス配慮です。
ゲームには関係ありませんが、木の実と呼ばれるカードはどうみても岩肌に揺れるイソギンチャクに見えます。きっと、ドイツ語の木の実とイソギンチャクは綴りが似ているのでしょう。イラストのオーダーで手違いがあったに違いありません。真相は今となっては知る由もありません。転がっているのはモアイだけではなく、ここにも永遠の謎という名のロマンが横たわっているわけです。さすがユルゲン先生の作品です。
手番の最初に、この捧げものを丸太のコストを支払って一枚手に入れることが出来ます。
忘れ易いルールなので注意です。
これは初期手札。各自同じ手札でスタートします。
手番が来たら:
を実行します。
カードディスプレイ。こういうカードの並べ方はA型の血が騒ぐ。
手順④のカードの補充は、4枚×4列のカードディスプレイから手札が3枚になるように行います。ある列のカードが無くなったら、山札から4枚を補充します。山札からカードを補充できなくなったらゲーム終了です。
カードディスプレイからの手札補充は、このゲームに2つあるポイントのうちの1つです。
この写真では木の実の狩猟者のアクションが起きます。カードの補充箇所は超重要です。
あのカードが欲しいけど、これを取ったらアイツに利益が、、丸太がどうしても欲しいからこのカードを取ろう、、こんな展開を演出するルールです。
祭りだ! 捧げ物を出せ!
前後しますが、手順②でモアイのカードをプレイしたら、捧げものラウンドが始まります。各自、食物の手札の中から1枚を捧げものとしなくてはなりません。こうして捧げられたカードは、ゲーム終了時の得点に変化を与えます。従って、カードの内訳が重要になってきます。
モアイをプレイしたプレイヤーは、特別に自分のカードを裏向きに出せます。さらに、ストックから好きなカードを1枚取り、表向きに捧げものに加えることができます。捧げものの情報が重要な中で、他のプレイヤーの知らない情報を得る事ができるわけです。
ゲーム終了時、捧げられたカード枚数に応じて手札が得点になる。
ゲーム終了時、今までに捧げられた捧げものカードを全てオープンし、カード枚数の序列を決めます。これにより、沢山捧げられたカードは高得点、捧げられた枚数の少なかったカードは低得点となります。
こうして、ゲーム中に手に入れた勝利点と、捧げものによる勝利点を足して最高得点のプレイヤーが勝利します。
これがこのゲームのポイントの2つ目です。狙いの食物の得点を高めるには手札からカードを出さざるを得ず、そうすることによって得点源が無くなってしまうというジレンマです。
プレイ記
TBGL会にてMOGさん、流さんと3人プレイ。
序盤から木こりで優勢を保とうとする。絶えず木こりが他のプレイヤーよりも多いことにより、必須な丸太を他人よりも沢山貰う作戦。しかし、それを見た二人は捧げものからCOQが狩猟可能な食物を外してくる。
あそこは丸太が豊富だもんねー
ウッ!
そうこうしているうちに、流さんが村へ司祭大量に招き入れる新興宗教。これまで誰も司祭をプレイしていなかったので、手札補充で司祭が出る度に得点チップが新興宗教ナガレ教に吸い込まれていく。
ニヤニヤしながら空中浮遊などを披露し、得点チップを集める悪徳宗教に対抗すべく、MOGさんと後れ馳せながら司祭を集めてプレイしていく。
当然カードの枚数には限りがあり、それは司祭カードにとっても同じなわけで。ナガレ教に対抗する枚数の司祭を揃えたころには司祭カードが枯渇するという策に見事ひっかかる。
序盤に仕込んだ捧げものの得点も空しく、散ってしまいました。
ナガレ教祖:38 COQ:36 MOG:29
プレイ時間:40分(3人)
総評
Silver
個人的には、かなり面白いカードゲームだと思いました。クニチーの交易王とミドル級カードゲームの双璧になってもおかしくないポテンシャルを持っているゲームだと思います。
モアイ勝ち、司祭勝ち、捧げもの勝ちと勝ち筋も多彩で、他のプレイヤーの動向も見え易いことから、ゲームの展開も多彩となりそうです。ラパヌイカードの選択とアクションの発生、そして捧げものカードの適度な記憶とブラフがとてもうまくデザインされています。他人やゲームの展開を掴み易いのも○ですね。
流石ユルゲン先生の作品なだけある…と言いたいところですが、どうしてこんなに話題にならなかったのかは謎です。箱が地味なせいなのか、所詮モアイを運ぶだけのゲームだからか。
それぞれのシステムに目新しいものはそれ程無いかもしれませんが、それらの組み合わせと40分程度で軽く楽しめるバランスはとても良いデキ。
プレイしたメンバーの評判も良かったです。
オススメ。