ボトルインプ

大きい数字が常に勝つとは限らない。
そしてボトルは重さを増していく・・

メーカーZ-MAN games他
発売年1995年
作者Günter Cornett
プレイ人数3-4人用
対象年齢10歳以上

ゲーム概要

ジキルとハイドの並ぶトリックテイキングの怪作「ボトルインプ」です。実はこの2つのお話の原作者は同一人物(ロバート・ルイス・スティーブンソン)なのです。原作のお話に沿ったかたちで、このゲームは特殊な勝利条件のゲームとなっています。

このゲームをインストする時には、必ず添付の説明書の物語を聞かせています。

地獄の業火で鍛えられたガラスのボトル。
その中には小悪魔が1匹住み着いていた。
この瓶を買う事ができたら、富、名声全てが叶う。
しかし、この瓶を持ったまま死んでしまったら、その魂は地獄の業火で永遠に焼かれる。
この瓶を手放すには、買った値段よりも安く売るしかないんだ…

The Bottle Impより

このお話の概要を知っているかどうかでこのゲームの面白さが変わると思います。テーマって大事ですよね。

基本的には、このゲームはマストフォロー(可能な限りスタートプレイヤーが出したスートと同じスートのカードを出さなくてならないトリックテイキングの一般的なルール)です。全員がカードを出した後に、スートに関係なく最大の数を出した人がトリックを取得します。

ゲームには1〜37のカードが登場し、(青/赤/黄)スートは3つのです。3つのスートの割合は均一ではありません。ゲームには、いつでも参照することのできるカード構成表が付いています。

ただし、このゲームでは”ボトルの値段”が重要です。トリックの中で最強のカード(=トランプ:切り札)は、ボトルの値段を基準に決まるのです。具体的には、ボトルの値段よりも低い値のカードのうち最大の値のカードが切り札となります。つまり、ボトルの値段より低い値のカードがある場合のみ切り札が生まれ、そのカードを出したプレイヤーがトリックを取得するのです。

切り札を使ってトリックを取得したプレイヤーは、トリックと同時にボトルも取得してしまいます。そしてボトルの値段は切り札の値となります。したがって、ボトルの値段は段々下がっていくことになります。すべてのカードを出し終わった時に取得していたカードのコインの印が得点となりますが、最後までボトルも持っていたプレイヤーの得点はゼロ。さらに、マイナス点を食らってしまいます。

各カードには数字の他に得点を表すコインが描かれており、これがゲーム終了時の得点となります。
ゲーム開始時にカードをすべて配りきります。その後に、全員が配られたカードの中から一枚を選択して裏向きに捨てます。これが、最後までボトルを持っていたプレイヤーのマイナスカードとなるのです。
ボトルの値段の開始値は「19」。
基本はリードのプレイヤーからカードを出していく、マストフォローのトリックテイクです。全員がボトルの値段より高いカードをプレイすれば、トリックを取るのは最も高いカードを出したプレイヤーです。
ただし、1人でもボトルの値段よりも低いカードを出した場合は、その中で最も高いカードが勝利します。そして、ボトルと共にトリックを獲得します。
トリックに勝利したカードは新たなボトルの値段となります。
こうして、獲得したカードの得点が勝利点となります。ただし、最後にボトルを所持していたプレイヤーはトリックの得点はゼロ。さらに、最初に埋めたカードの得点(全員分)をマイナスとして受け取ります。

規定数のハンド合計得点で勝敗を決します。

プレイ記

TBGL宮原ゲーム会にて。MOGさん、ちきさん、JOSSさんと4人プレイ。

この日はボトルインプの持ち込みが被りましたが、ツボはちきさんのナイスなやつをお借りしました。「ハクション大魔王の魔法のツボ」フィギュアです。

GEEKでもタバスコのミニボトルを使ったりと色々な写真がありますが、日本ではこれが馴染みますね。
ツボが付属しているバージョンもありますが、Z-MAN版は壺カードのみでやや寂しい。

というわけで、ボトルは魔法のツボを使用、かわいい。スタート時、カードを各自に全配りし、いらないカードを左右のプレイヤーと交換。その後、マイナス用のカードを「19」の下に敷いてゲーム開始です。

COQの手札。3/8/13が現在のボトルの値段の「19」を下回っている。これをどのように処理するのかが重要。ボトルを取らなくて済む様にプレイするのか、高得点のカードを獲得するためにプレイするか。

中でも「3」はやばい、絵もやばい。こんな数字でボトルを獲得してしまったら死亡確定。

最初のトリックは、ボトルを引き取る事無くMOGさんが獲得。数字の高いカードは価値が高いものが多いので、大量得点。ただし、最後にボトルを持っていなければ、の話。

すると、リードのMOGさんから黄色の「7」がでた。燃えるヒゲのテンパったおじさんを手放すチャンス。

JOSSさんが黄色の18を出してボトルを獲得。テンパったおじさんは無事JOSSさんに貰われていく。

このおじさん、終盤にまだ手札にあると、本当に心境を圧迫してくる。まさにプレイヤーがこんな状態になるので面白い。いい絵だ。

最初のハンドではなんとかボトルの値段以下のカードを処分することに成功し、あとは悠々自適な隠居生活。

取れそうなところでカードを獲得。…と、行きたいところだが、マストフォローのせいで勝負のカードを犬死にさせてしまったりする。むずかしい。

結局、JOSSさんがボトルを抱いたまま業火に焼かれて沈む。マイナスと言えどもそれほどのカードは入っていないが、得点がゼロというのが痛い。

続く2ハンド目。リードのMOGさんの初手が素晴らしく、度肝を抜かれた。何度かこのゲームをプレイしている中でこのゲーム会での様子を紹介した理由がここにある。

なんと、初手「1」。ボトルを獲得する羽目になれば、敗北決定の1手。

だが、このカード構成表をもう一度見て欲しい。黄色のカードは12枚、その中で最初のボトルの値段「19」より低いのは9枚もある。

マストフォローのシステムで、最初に「1」をだせば、数人は19以下の黄色しか持っていないという読み。きっと、19以上のカードも数枚持っていたのではないかと思うが、見事な1手。ね、このトリテは奥が深いでしょう?

思惑通り、ボトルの獲得はせずにこのトリックを切り抜ける。この1手の勢いのまま、MOGさんがぶっちぎりの勝利をおさめたのでした。

絶えずボトルホルダーとして活躍していたJOSSさん記念の1枚。肩にツボが取り憑いていますよ…と。

最終得点

MOG:104 COQ:62 ちき:60 JOSS:−22

プレイ時間:35分

総評

Silver

一風変わったトリックテイキング。
常に強いカードが勝つとは限らないのが面白い。考えることが多くてクラクラするけど中毒性があり、読み合いが深く、玄人好みな名作。よくぞ、わずか3スートでここまで悩ましいルールを作ったなと。一方で、3スートしかないところが、プレイ感をクリアにしている。しかも、お話とのリンクでルールがスッと頭に入ってくる。最初にカードの交換を両隣とするところもカード配り運の平均化になっていて地味に効いている(毎回白熱する)。

独特のイラストも素晴らしく、ヤバい雰囲気やら物語が感じられるものやら、好み。この絵がもっと多くのカード(半分くらいはテキストしか書かれていない)に描かれていれば、もっと良かったと思う。

インストはそれ程難しくないが、初見のプレイヤーが自由にトリックを取れる様になるには2回、3回のプレイが必要なようだった。ただ、そこを越えれば1番のお気に入りカードゲームに出会える可能性があるので是非遊んでみて。

旧版には木製のボトルが付属していたようだが、新版(Z-MAN版)にはボトルカードが付属するのみ。ただ、今回のフィギュアのように、お気に入りのボトルを用意して遊ぶのも一興かもしれない。

個人的にはトリテ3本指に入る名作。オススメ。



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