このカラベル船、伏線を拾うスピードが早過ぎる
メーカー | MESAboardgames |
発売年 | 2010年 |
作者 | Gil d’Orey |
プレイ人数 | 2-4人用 |
対象年齢 | 8歳以上 |
ゲーム概要
大航海時代!
ワインゲーム「ヴィンテージ」等を販売しているポルトガルのメーカー、MESA社の大航海時代ゲーム『カラベル』です。アートワークのクールさに定評があるメーカーです。
プレイヤーは大航海時代のポルトガル船団を率います。リスボンを出港して世界を周り、交易品を集めて勝利点獲得や大聖堂建設に励みます。ゲームボードはメルカトル図法の世界地図になっています。大航海時代のゲームではお決まりの見た目ですが、中でも美しい方に分類されると思います。海域はヘックスマスで仕切られており、海流が書かれているのが特徴です。
海流に乗って移動が新しい
最初は皆、リスボンから出港します。各港には、最初に到達したプレイヤーの記念碑が建てられます。また、交易品のある港に辿り着けば、船に交易品を積むことができます。
手番はアクションポイント(AP)制です。9つのAP(後にアップグレードして12ポイント)を使用して移動します。リスボンに交易品を持ち帰ると勝利点とすることができるのですが、勝利点を貰う代わりに船団をアップグレードすることができます。アップグレードすると、極東地域の交易品を積載可能になるのと、APが増える効果があります。
通常、AP1を消費してⅠマス船を動かすのですが、ここで海流が力を発揮します。海流の通りに船を進める場合は、なんと無料で進めてしまうのです。
これを利用すると、1手番で気持ち良い程に移動可能です。ただし、地図上に青印、赤印、髑髏印のマスがあり、ここに突入するとイベントが発生します。青は、自分の手札からカードを1枚出さなくてはならず、赤は嵐の判定を行わなければなりません。髑髏は海賊を出現させ、APの消費を余儀なくされます。手札のカードには、APを増減させるもの、風を発生させるもの等が含まれています。
手札コントロールで希望峰をまわれ
赤印のマスは、喜望峰をまわる時に障害となるように設置されています。このマスに侵入したプレイヤーは、ダイス判定を求められることになり、嵐の被害を受けると積載スペースを失うことになってしまいます。
しかし、嵐の判定が全て運というわけではありません。直前にある青印のマスで風による強制移動カードを使用し、嵐マスの適用を受ける事無く喜望峰をまわるという戦略もたてることが出来るルールになっています。帰りの分も考えて、手札のコントロールは重要です。
得点か、浪漫を求めて船をアップグレードか
さて得点は、前述の通り、交易品を運ぶことにより得る事が出来ます。それ以外に、ゲーム開始時に配られる目的地カードに自分の記念碑を建てていれば、追加の勝利点が入ります。
また、リスボンで規定の交易品を荷揚げすると、勝利点の代わりに大聖堂の建設を行うことができます。これにより得たタイルも、ゲーム終了時に得点となります。
ゲームは、大聖堂が完成すると終了します。終了時に最も多く得点を獲得していたプレイヤーが勝利します。船をアップグレードして極東を目指すのか、近場で済ませて往復回数で勝負するか、目的地カードも加味して効率の良い得点獲得を目指すゲームです。
総評
大航海時代がテーマと聞いては避けて通るわけにはいかない、ということで、手に入れてから4人で数回遊んでみました。イベントカードの使用や交易品の積み込みなどのルールは悪くないです。テーマは好物、アートワークは綺麗、なので絶賛…したいところなのですが、何度かプレイして海流や目的地カードのルールが大味だと感じてしまいました。
ルール説明にもある通り、目的地カードはゲーム開始時に配られるのみで、任意の変更等はできません。枚数が多過ぎて、ゲーム開始時には無言で地図とにらめっこです。そしてこのゲーム、海流を利用する事により、1手番で移動できる距離は、ルールを間違えているのではないかと思うくらいに長いんです。そのせいで、手番順次第ではリスボン近辺の港は1度も手番が来ないうちに全て記念碑を建てられてしまいます。
また、アップグレード後の船団のスピードも異常な程です。ゲーム開始当初は一気に喜望峰をまわったりすることは出来ないのですが、アップグレードが起こる頃には手札も整って来ており、2手番で全ての交易品を集めてリスボンに戻って来れたりしてしまいます。そうなると、アップグレードを選択しなかったプレイヤーは、時間と共に引き離されてしまいますので、ゲームを終了させようとします。従って、ゲーム終了間近の展開は、打ち切りが決まった漫画の伏線を無理矢理拾うかのように、急激に収束していきます。遊んだゲームの終盤の展開は全て同様でした。
収束する事自体は、デザイナーの意図の通りなのかもしれませんので、好み次第です。コンポーネントは豪華でアートワークは最高です。しかし、航路が色々選択できるので長考が起こり易いところも個人的にはマイナス点です。自他共に大航海時代好きを認める筆者もこのゲームは手放してしまいました。