Knarr(クナール)

死は必ず訪れるが、名誉は永遠である

発売年2023年
作者Thomas Dupont
プレイ人数2-4人用
対象年齢8歳以上

ゲーム概要

乗組員クルーを揃えてヴィンランドを目指せ!

出典:BGG

フランス産のカードゲーム『Knarr』です。タイトルは日本人には少し発音しにくいですが、9世紀頃のヴァイキングが使用していた船のことです。Wikiに従うなら、カタカナ読みは「クナール」となります。最初に目を引くのは美麗なアートワーク。漫画「ヴィンランドサガ」を思い出させるような日本人好みのヴァイキングアートに、フランス産らしい縦長のカードが映えています。ゲームはセットコレクション(5色の乗組員を雇って探検に出る)とエンジンビルド(探検した島と自分だけが交易ができる)が主軸となっており、乗組員と島から得られる勝利点を競います。30分程度で終わる本作は「宝石の煌めき」に少し似ているようなテイストの良質な中量級です。

注:ヴィンランドとは、レイキャヴィクを拠点とするレイフ・エリクソンによる最も有名な探検で発見された北アメリカと伝えられています。

カードのアートが非常に美しい

乗組員クルーの雇用

緑をプレイしたので緑2枚のカードに書かれたシンボルのリソースが得られる

ゲームのアクションは「乗組員を雇用する」「探検に出かける」かのおおよそ2択です。手番では、このどちらかを選択していきます。各プレイヤーは乗組員カードを3枚手札としており、その中から1枚を選択して自分の乗組員エリアにプレイし、探検に必要な乗組員を雇用します。この時、5色ある乗組員カードは色ごとに重ねておき、手番でプレイした色のカードの効果が全て発動します。効果といっても複雑なものではなく、勝利点の獲得・名声点の獲得(名声点は勝利点の定期収入になる)・交易に必要なブレスレットの獲得・探検に使える雇用トークンの獲得のいずれかです。乗組員の雇用だけを見れば、同じ色のカードを集めることでリソースや勝利点を獲得できる機会が増えるということです。例に出した「宝石の煌めき」では宝石トークンをカード交換用に集めるだけでしたが、本作では宝石トークンに相当する乗組員カードの種類を揃えることによる恩恵があるので考えることが少し複雑になっていますね。また、手札が3枚しかないのでままならなさもあります。

プレイしたカードが手札補充に影響する

このゲームでは常に手札を3枚保有している状態でいることから、乗組員カードをプレイした後にはカードを場から1枚補充します。場には5枚のカードが表向けられており、それぞれのカードがボード下部に記載されているマークによって5色のうちの1色と紐づけられています。カードの補充は完全に自由ではなく、プレイしたカードの色に対応するマークのところに置かれているカードを取らなくてはなりません(雇用トークンを支払うことによって任意のカードも取れます)。カードプレイ時に次の手番のことまで考慮して色を選択する必要があるということです。この手の、カードの補充にプレイ済のカードが関連する仕組みをルールにうまく組み込んでいるゲームは名作が多い(「サポテカ」や「エンバーカデロ」など)印象があります。

船は危険な海にある時にこそ、最も価値がある

乗組員が揃ってきたら、いざ探検の大海原へ旅立つアクションが選択できます。目的地にはAとBの2種類があり、探検するのに必要なリソースが異なりまし。Aの目的地は必要なリソースが少なく、報酬はリソース寄りのため、序盤向け。Bの目的地は必要なリソースが多く、報酬はおおむね勝利点のため終盤向けでしょう。

探検に行くには、場から目的地カードを1枚選択し、記載されている乗組員のリソースを支払う必要があります。目的地カードを横目で見ながら乗組員を雇用していく必要があるということです。達成して即時ボーナスを得た後、目的地カードは自分の個人ボード上部に配置して交易をできる状態にしておきます。リソースはカードの代わりに雇用トークンでも支払えますが、雇用トークンは最大3枚までしか保有できません。探検をすることで雇用していた乗組員を捨て札にする必要があるのでこの見極めのタイミングは重要です。

乗組員カードにも目的地カードにもエンジンビルドの要素がありつつ、前者は後者を得るために廃棄しなくてはならないという関係性は比較的新しく、うまく機能しています。

<山札の補充>
乗組員カードの山札が尽きた場合には捨て札をリシャッフルして新たな山札をつくりますが、この時、捨て札置き場が空だと最も多くの乗組員を雇用しているプレイヤーは保有している中から1枚捨て札にしなくてはならないので、山札が尽きるのを見越した探検の実行のタイミングも重要です。このようなほんの少しのルール調整が渋く光るゲームです。

フリーアクション:交易

個人ボードの左右にあるのは雇用トークンとブレスレットトークン、最大3つずつ持てる

探検して発見した目的地とは交易ができます。交易はフリーアクションとして、手番の前後に1回だけ実行できます。個人ボードの上部に並べた目的地カードは3本のラインになるようになっており、最大3つ保有できるブレスレットを支払った数によって、右から最大3列まで記載されているリソースが手に入ります。

ブレスレットを2つ支払うど左から2列のリソースが手に入る

手に入るリソースは乗組員カードに記載されている4種類に加えて、乗組員カードのランダムプレイ(山札から)があります。交易とブレスレットの供給のサイクルを構築できれば、毎手番リソースが手に入るようになります。

勝ち筋は主に3つ?

ヴァイキングは名声が命:名声が一定を超えるごとに勝利点の定期収入が増える

このゲームの勝ち筋は主に3つあります。乗組員カードの単色揃えによる得点の獲得。目的地カードによる得点の獲得。それから、これらを駆使して名声点を稼ぎ、毎手番定期収入としての得点の獲得。いずれもカードをカットするような行為でしか止められないので、誰かが走る前に止めないといけないですが、複数の勝ち筋が存在しているので色々な展開が楽しめます。誰かが40点に到達したら、そのラウンドの終了時に最も得点を獲得しているプレイヤーが勝利します。これまでのプレイ経験では、勝利点の定期収入となる名声点がとても重要な印象です。

味変と2人プレイ調整:アーティファクト

ゲームに慣れてきたら、追加のアクションや得点をもたらすアーティファクトを入れて遊ぶことができます。例えば「同じ色の乗組員カードを3枚揃えたら得点」「目的地をA→Bの順番に配置するたびに乗組員カードをプレイできる」などの効果が全体に発動します。また、2人プレイだと停滞しがちな乗組員カードディスプレイを探検アクション選択時に1枚捨てることができるアーティファクトも同梱されており、2人プレイでも常にカードの駆け引きが発生するように工夫されていますね。

近年の色弱対応の流れ

「シーソルト&ペーパー」にも採用されていましたが、最近は色を表現するマークがユニバーサルに採用される流れができてきているようです。とても良いことだと思います。

総評

Gold

とてもよく工夫され、丁寧に作られた良質の中量級カードゲームです。1ゲーム30分程度であることから、連続で遊ぶことにも適しています。前述の通り「宝石の煌めき」ライクでゴールを描きながら最短となるような1手を積み重ねていくゲームで、ソリッドな側面もあります。一旦、走ったプレイヤーを止めるのも難しいですが、走るまでの、頭ひとつ抜きん出る方法を工夫するゲームと捉えれば良いと思います。

アートワークにも抜かりがなく、カードはトランプの箱のようなカードケースに収納されており、所有満足度も高いです。唯一、駒の色の視認性が悪いので、筆者は赤・青・黄・緑の駒を別途用意して遊んでいます。

リソースとなる乗組員カードをセットコレクションして目的地カードを得るのですが、その双方にエンジンビルドの要素がありながら、前者を後者を得るために廃棄する悩ましさがあるというのがとても面白く、「宝石の煌めき」よりももう一層悩ましさが深いと思います。カードバランスも良いです。

「宝石の煌めき」が好きな方はきっと気にいると思います。筆者もその一人です。2023年のエッセンで各国にお披露目され、日本にも入ってくるものと思われます。BGAでもオンラインで遊べるらしいです。とても良いです。2023年の中量級では随一。評価はGoldに。

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