人は皆、わかりあいたい
メーカー | Repos Production |
発売年 | 2021年 |
作者 | François Romain |
プレイ人数 | 3-6人用 |
対象年齢 | 10歳以上 |
ゲーム概要
語彙と思考を雛形にした連想クロスワード生成ゲーム!
2022年のドイツ年間ゲーム大賞(SDJ)ノミネート作の『ことばのクローバー(原題:So CLover!)』はワード系のコミュニケーションパーティゲームです。本サイトでこの手パーティゲームをレビューすることは稀ですが、初プレイ以来このゲームの不思議な魅力に取り憑かれたので、手に入るうちに紹介しておきたいと思います。
このゲームは協力ゲームの一種で、プレイヤーそれぞれが作成したミニ連想ゲームのようなものを作成者以外のプレイヤーがみんなで解き明かそうとしていきます。ゲームを通してノーミスで全プレイヤーの正しい答えを導き出すことが目標です。いわゆるクロスワードのように回答を作成する過程で自然とヒントが出てくるようにデザインされた本作は、仲間の語彙と思考を雛形にした連想クロスワード生成機です。これをみんなで解いて、2つの言葉から導き出される意外な言葉を大いに楽しみましょう。
ランダムに作成される連想ゲーム
全員が同時に、1枚につき4つの言葉が描かれたドーナツ状のカードをランダムで4枚ひき、クローバー型のホルダーにランダムに配置します。こうすることで、クローバーの1辺ごとに2つの言葉がセットされます。次に、誰にも見られないように、この2つの言葉から連想される言葉を1つずつ計4つ書き込みます(単純な翻訳や造語はだめというようなルールがあります)。
4つの言葉の書き込みが完了したら、カードをホルダーから外し、ランダムに1枚を加えて計5枚にして準備完了。これを自分以外のプレイヤー全員で協力して元の形に戻してもらうわけです。ちなみに、難易度を上げたい場合はここで加えるカードの枚数を増やします。
もどかしい、だけどみんなが一生懸命解いてくれる
4つの言葉が書き込まれたクローバー型のホルダーとカード5枚を受け取ったプレイヤー達は、書いた人物の思考を想像しながら5枚のカードから正しい4枚を見つけ出し、元の形を復元すべく、カードを回転させたりして試行錯誤&相談しながらはめ込もうとしていきます。この時、作成者は言葉を発するどころか、何もすることはできません。
言葉を発することができなくてどうなるのかというと、他のプレイヤー達はなるべくわかりやすいところから解いていこうとします。わかりやすいところのカードをはめ込むことができれば、そのカードの別の辺が自動的にヒントになるのです。
つまり、すべての言葉が完璧な連想を導いてなかったとしても、ある1辺で確信的な連想が導ければ、案外元の形復元は成功します。この1箇所確信的に配置できれば、連鎖的にヒントが出現するところがクロスワードパズルのようで実にエレガントなデザインです。ヒントを出す条件など煩わしいルールは一切ありません。パズルを解くこととそれをみて楽しむことに集中できます。
ふんわりとした得点システム
これで完成!と思ったら、正解しているかどうかを作成者に聞きます。正解1枚ごとに1点、1回目のチャレンジですべて正解していればボーナスで+2点、失敗していた場合は合っているものだけを残して2回目のチャレンジをします。
このゲームは協力ゲームなので、特定の誰かが勝利することはありません。全員の作成したクローバーをなるべくノーミスで全問正解することが目的です。
プレイ記
Ottimo会で、タナカマさんが出してきた。タナカマさん、あきおさん、えりえりと4人プレイ。
これ組み替えてええの?
ダメです!そのままやってください。
自分で答え覚えらていられへんわ!
おじいちゃん!
スマホに撮影しておいたらどうです?
とこんな感じでゲームは始まる。スマホがあればおじいちゃんにも優しい。カードは完全ランダムなので時にめちゃくちゃ連想しにくいワードが並ぶこともあるかもしれない。COQのカードはこんな感じ。
まず最初に飛び込んできたのは「カラス」と「消防士」である。こんなのこれしかないでしょ!と有名な「カラスのパン屋さん」の著者『かこさとし』と自信満々に記載(カラスの消防士も出てくる)。
そのままの勢いで、「ヒツジ」と「双子」は『ショーン』、「写真」と「ラジオ」で『レントゲン』と書き込む。レントゲンはX線を写真に焼き付ける技術で、この手の技術をラジオグラフィと総称するはず。まさに完璧な連想である。これがわからないはずはないと思い、左側は「牧場」優先で『OK』とする。しかしこれ、思い付かない組み合わせになったら相当キツイね。
ここから回答タイム。えりえりが毒々しい手でカードをはめ込んでいく。
OKは絶対「牧場」ですよ!
OKと牧場は鉄板の関係で、早くもカードが一枚固定されて別の辺にヒントが固定される。
でもOKと「体積」は意味不明やで。レントゲンはなんや?アフリカで発見されたとか?
しまった!レントゲンが通じてない!
「かこさとし」はなんか絵本とかですかね?
知らんわ!そんなもん!
一通り試行錯誤しながら一生懸命復元しようとしてくれる。あーでもないこーでもないと盛り上がった結果、COQのクローバーは1回では当ててもらえず。2回目で全問正解。面白かった!
かこさとしを知らないなんて、文化レベルを落として遊ぶべきでしたね!
何を偉そに言うとんのや!普段エッロいことばっかり考えてるくせに
プレイ時間30分
総評
Silver
とても面白いです。普段、ワード系のコミュニケーションゲームは一瞬の盛り上がりを見た後に、どれも大体一緒だなという評価に落ち着くことが多いのですが、本作はプレイ後にじわじわとリプレイ欲が湧く珍しいゲームでした。得点ルールはふわふわしているし、ゲームとして成立しているかどうかも怪しいのですが、不思議な魅力を感じ、結局後日手に入れました。
一見さんと遊ぶよりは、相手のことをある程度知っている友人や家族と遊んだ方が楽しいゲームだと思います。相手がどのようなものの考え方をしているのかの片鱗がわかり、より一層仲良くなれるきっかけになると思います。遊ぶためにはある程度の語彙が必要であることから、あまり小さな子供と遊ぶのは難しいかもしれません。遊ぶ人数は4人くらいが丁度良かったと思います。6人集まったら3人ずつのチームに分けて対抗しても面白いかも。
奇妙な組み合わせのワードから導き出された予想外の答えに大笑いしたり、妙に納得する発想に共感したり、難問に悩んだりするパーティ的な楽しさが存分に味わえます。このゲームでは、そういった盛り上がりの面白さに加えて、パズルを解く楽しさと自分を知ってもらえる喜びも感じられます。
問題を解いている時は、自動的にヒントが提供されるクロスワードのような上質なパズルを仲間と解決していく過程がとても楽しいでしょう。そして、目の前の仲間の思考のプロセスを垣間見ることができるでしょう。このゲームは、目の前にいる仲間の語彙と思考を雛形にした連想クロスワードの自動生成機なのです。
このように、わずか2ワードで示される連想ゲームを介して、仲間の物事の考え方を知るのが楽しいです。一方で、一緒に遊んでいる仲間が、一生懸命自分の考え方・発想を想像してくれる過程を見ていることも楽しいですし、当ててもらえた時の満足感は大きなものです。思いっきり自分語りをした上に、それを思いっきり肯定してもらえたような良い気分。皆が1人の発想を一生懸命解明しようとするという意味で、協力ゲームとしたことに大きな意義がありますし、ふんわりとしていても得点システムを実装することで全員が同じ方向を目指すように仕向けたことに意義があると思います。そして、クロスワードのように解いていく過程でヒントが自然と生まれていくデザインがとてもエレガント。
人は皆、他人とわかり合いたいと思っていると思います。どんなに仲良くなった人でも、現代科学の下では脳の中身を共有することはできないので、わかり合った気になることはできても真に同じ気持ちになったかどうかを調べる術はありません。人間は孤独で、故に誰かに自分を認めてもらいたい承認欲求は人の欲望の中でも最上位に位置しているのだと思います。このゲームはそんな人間の根源的欲求も満たしてくれるようなゲームだと思いました。などと小難しいことを考えなくても面白いのですが。
難点を上げればキリがなく、ゲームとして成立しているかどうか怪しい得点システムや、そもそもカードの組み合わせが難解過ぎる場合もあるし、カードがバラバラと落ちやすいコンポーネント、ある程度の語彙が必要なゲームであることから対象年齢が比較的高めであることなど様々あるのですが、細かいことは気にしなくて良いと思います。通常のゲームの面白みとは異なる種類の面白さかもしれませんが、最近いろいろ出ているコミュニケーションゲームの中では筆者はこれが一番好きです。