波乱と海原(テキサスショーダウン)

多数決はいつも君を傷つける

発売年2015年
作者Mark Major
プレイ人数3-6人用
対象年齢10歳以上

ゲーム概要

とってはいけないトリテ界最強のトリテ

『波乱と海原(Sea of Strife)』は、既にこの世に数千種類存在するトリックテイキングゲーム(トリテ)の中でも長らくトップ10の上位に君臨するほど人気のトリテです。発売当初は『テキサスショーダウン(テキショー)』という名称でしたが、再販にあたり、ポーカーの一種であるテキサスホールデムに名称が似ていることからテーマを変更してリメイクされました(ポーカーゲームだと勘違いされないようにするため)。元々、テキショーの元になったゲームが「Strife」という名称であったため、原点回帰のような名称変更でもあったようです。ちょうど筆者が育児でボードゲームの購入を控えている時に発売され、市場から姿を消して久しいタイトルであったため、再販を心待ちにしていた作品でもあります。

テキショー(出典:BGG)

一般的にトリテというのは、全員がカードを1枚ずつ出して勝負を決するミニゲーム(トリック)を繰り返して、ミニゲームに勝利して獲得したトリック(カード)で点数をつけるというゲームの総称(ジャンル)です。その中でも本作は、トリックを取ってしまうとマイナス点というマイナーな部類に入るルールをベースにしています。

マストフォロー切り札なし

トリテというのは、基本的にカードを1枚ずつ出して勝負を決するミニゲームを繰り返すゲームなので、あまり複雑なルールにはなりません。また、カードの出し方や勝敗を決するカードの強さの順番などがある程度限られているため、いくつかコアの部分のルールを確認することで大体の全体像が掴めます。フォロー(カードを出す時のルール)と切り札(問答無用に強いスートがあるかどうか)を確認することで大体のルールがわかるということです。

サンゴのスートがないのでどれでも出せる

このゲームは「マストフォロー」と呼ばれる一般的なルールを採用しており、リード(最初にカードを出すプレイヤー)が出したスートのカード手札にあれば、それを出さなくてはなりません。リードスートが手札になければ好きなスートのカードを出すことができます。このゲームのユニークな点は、新たに出されたスートもリードスートになるというところです。すなわち、場に出ているスートのどれをフォロー(場にでているスートのカードを出す)しても良いのです。全員がカードを出し終わった後、最も多く出されているスート(多数決)が最終的なリードスートとなり、その中で最も大きなランク(数字)を出しているプレイヤーがトリックを取ります。切り札と呼ばれる問答無用にトリックをとるカードはこのゲームには存在しません。

サンゴのスートが最多のため、最終的なリードスートになる

スートが同数の場合はその中でランクが最も高いカードがトリックを取ります。このゲームはトリックを取るとマイナス点となるゲームなので、できるだけトリックに負けるようにカードを出していく必要があります。最初に規定数分のチップを受け取ってゲームを始め、ラウンドごとにとってしまったトリック分のポイントを失っていきます。

スートごとにランク幅が異なる

このゲームのもう一つのユニークな点は、スートによってランクが異なるというところです。トランプのように各スートに同じランク(1〜13)が存在するのではなく、各スートのランクは重なっていません。このカード構成により、新たなスートを場に出す際に、もしも自分が出したカードがリードスートの1つになった場合でも確実に負けるようにカードを選択したり、ハイランクのカードを処分したりというドラマが生まれます。

ヴァリアントルール:真のテキショー

『波乱と海原』には「各スートの最もランクの高いカードが出された場合には、そのスートがリードスートから除外される」というヴァリアントルールが追加されています。どうやらこのルールは元々テキショーのルールだったようなのですが、何らかの理由により排除されていたようです。まったく別のゲームにもなり得るようなルールで賛否両論あるようですが、筆者はこのヴァリアントルールを適用しない方が好みです。真のルールでテキショーが発売されていたら、歴史が変わっていたかもしれませんね。

総評

Platinum

筆者がこれまでにプレイしたトリックテイキングの中で最も面白いと感じている作品です。システム上、最低でも4人以上、5人か6人で遊ぶのが最も面白いので人数が集まった時が活躍の場になるのですが、最高に面白いカードゲームでとても気に入っています。ルールは簡単に教えられますし、人数が増えるほどに面白さが増すということで、ゲーム会でもメンバーを募りやすく、重宝します。カードが潤沢にあるラウンド開始時はカオスですが、次第に手持ちカードの全貌が明らかになっていくにつれてテンションが高まり、最後まで気が抜けない展開になります。

通常、トリックを取るとマイナスポイントというゲームは原始的な面白さ(頑張ってポイントをとるという喜びとか)を失っていることが多いのですが、このゲームは予めヒットポイントとなるチップが配られているせいもあり、マイナスポイント制のトリテの中でも群を抜いて面白いですし、新たなテーマとなった「海原で災難を回避して帰港する」というフレーバーにもマッチしています。どちらかというとマイナーな部類であるマイナスポイント制のトリテが筆者の中で最も面白い作品となっているのは少し複雑な気分ですが、面白いので仕方ありません。

惜しむらくは、日本語タイトルロゴのダサさですが、カードのデザインは悪くないのでこれはこれで良いでしょう。とてもエレガントなゲームです。テキショーはプレミアがついていて中々手にすることが難しいですが、こちらは2023年現在定価で購入することが可能です。何気に、このゲームも筆者がSNSで推す”公称プレイ時間45分ゲームズ”です。

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