かつて世界にはドイツゲームがあった

| 発売年 | 2025年 |
| 作者 | Johannes Goupy, Yoann Levet |
| プレイ人数 | 2-4人用 |
| 対象年齢 | 10歳以上 |
ゲーム概要
蟻の国+スペースカウボーイの数え役満
かつて「蟻の国」というカツカツのリソース管理と陣取りに蟻の生態を無駄なくエレガントにデザインした傑作ゲームがあったのをご存知だろうか。残念ながら筆者は虫が苦手なので早々に手放してしまったが、この作者(Yoann Levet)はのちに「チューリングマシン」などの論理パズルゲームを多く発表してSDJにも肉薄している。その作者が「宝石の煌めき」のパブリッシャーであるスペースカウボーイと手を組んでドイツゲームテイストの新作を出すと聞いて、国内で流通するのを固唾を飲んで見守っていた。しかも共同デザイナーとして「ファラウェイ」の作者(Johannes Goupy)も加わっているらしい。
ゲームのテーマがポストアポカリプス(滅亡後の世界)という個人的にはSF過ぎて感情移入しにくいという難点はあるものの、前評判もよく、価格の割にコンポーネントの出来も素晴らしかったので、予定通り日本語版を入手した。

自由型セットコレクション
ゲームを端的に説明すると、カードを集めて盤面上に早い者勝ちで自分の部族の建物を建築していき、建物の場所に応じた要素を獲得して目標カードを達成していくゲームである。詳しくは、ジョーコデルモンドのあきおおじさんが説明してくれているので割愛する。
ポイントは、今盤面上にある自分の建物から出発点も含めた地形のカードを手札から出して建物を建てていくところである。つまり、自分で目標を定める一筆書きのカードのセットコレクションとも言える。次の目標地点まで必要なカードが「森・砂漠・砂漠・荒野」だからこれを集めなければという寸法である。手札上限のないカードのマネジメントからか、このゲームを「チケットトゥライド」に例える論調を見た気がするが、チケライ的なルートビルドとは少し様子が異なるだろう。

カードの取得方法はかなり制限されていて、6枚あるディスプレイから隣り合っている2枚を取得する必要がある。山札をギャンブルで引くことも許されていないので、運の要素を絞りたいというデザインの意図が垣間見える。
プレイヤーは建てた建物から、その土地の要素とシンボル(あれば)を獲得する。手番終了時に目標タイルの要素を獲得していればこれを達成して、ゲーム終了時の勝利点を確定できることに加えて、山札から手札を1枚補充できる。

この目標タイルは建物を建てていくとアンロックされる形で増えていくようになっていて、同時に手札のカードを個人ボードにさすことで要素を獲得できるようにもなっている。この辺りのシステムは無駄がなく美しいデザインで、さすが「蟻の国」のデザイナーだと感じる。
どうしてもチューリングマシンを匂わせたいらしい
カードを取得して建物を建てるだけというミニマイズされた中にドイツゲームの要素を美しく組み込んでいて、このままだと褒めるしか手がないのだけど、実は一点気になるところがある。
建物から獲得した要素をマーキングする機能がないのである。前述の通り、目標タイルの達成を目指して建物を建築して要素を獲得していく際に、それらを全て脳内で考える必要がある。「あそことあそこに建てているから森は2つで水辺も1つでアミュレットも獲得していて・・」という計算をゲーム中ずっとさせられるのである。

美しいルールデザインに定評のあるデザイナーであることから、筆者はこれを意図的に組み込まれたものと見ている。カードを取得して建物を建てていくワクワク感だけでゲームを構築するのではなく、絶えず頭の中で短期記憶を頼りにパズルをさせることでゲームのボリュームを増しているのである。
短期記憶は人によって結構差があるし、歳をとると衰えるし疲れる。
プレイ記
Ottimo会にて、ジョーコデルモンダーあきおさん、テンデイズゲームズタナカマさん、タナ嫁(あっきー)さんと4人プレイ。

ヘックスのボードにカードで建築していくんですよ。

アッティカやないか!

そや、アッティカやないか!

カードを払えれば飛地でも建築できます。

ほな、アッティカやないな!

ミルクボーイみたいになってますよ。
正直なところこのやりとりが面白く、数回繰り返している間に「アッティカ(カサソラメルクルによるおじさんたちは大好き傑作タイル配置ゲーム)」を知らないあっきーさんはポカーンとしていた。

出発点から目的地までのカードを出して建築するんです。

ほな、しりとりやないか!

こんな感じでヘックスのボードを組み、初期位置に自分の部族の駒を置いてゲームをスタートする。初期位置のみ、どのカードでも1枚出せば良いようになっている。それぞれの駒は形も違ってコンポーネントの質は高い。
残念ながら最後手番になってしまい、困難が予測される。1マスには1人しか建築できないし、誰かの建築マスを通過して建築する場合には通行料を払う必要がある(追加で払うのではなく、通常ストックに払う代わりに相手に渡す)。

ゲーム終了時に自分の建物のグループ(2軒以上の隣接)が得点源となるので、少し離れたところに2個目の家を建て、目標タイルの内容と睨めっこしながら拡大していく。みんな、初期位置をグループにするのは後回しで良いとわかっている。
2つ湖の間に挟まれた交通の要所を押さえたつもりだったが、みんなケチでここを通過してくれない。

COQのみが経験者であったため、目標タイルは基本的に全部達成しないと勝負にならないことのイメージが強過ぎて、無難な点数の低いタイルばかり集めてしまった。
結局、えぐいくらいにみんなから邪魔されたにも関わらず、最初に終了トリガー(建物建て切り)を引いたあっきーさんが勝利。
プレイ時間約50分
総評

Silver
古き良きドイツゲームのテイストを盛り込んだゲームが60分以内の比較的短時間で堪能できるのはとても良いと思います。基本ゲームでは、類似した内容のゲームになりがちかもしれないですが、作者もそこはわかっていて、様々な追加ルールを施したシナリオを準備しています。
一方で、ポストアポカリプスという陳腐なテーマと、脳内処理の負荷をあえて加えるようなデザインは好みが分かれる部分だと思います。加えて、もう少し濃密なインタラクションがあるとさらに良かったと思います。マップを狭くすることでインタラクションが生じるように促しているとは思いますが、スピーディーな展開で自分の目標を達成するのに忙しくて他のことは考えにくいかも。ちょっと自由度が低いですよね。
とはいえ、現代の世の中で受け入れられるインタラクションはこの程度が正解という時代でもあるので、その制約の中でよくぞエレガントなデザインをしてくれたという気持ちもあります。ルールは簡単だけどうまくやるのは難しいというボードゲームの肝の部分はきっちりと押さえているので、是非遊んでみることをお勧めします。綿密でスピード感のある展開はあまり似たゲームを挙げることができないので筆者はコレクションに加えておこうと思います。
