突如として連絡を断った調査施設6 パニックステーションへようこそ…
メーカー | White Goblin Games |
発売年 | 2011年 |
作者 | David Ausloos |
プレイ人数 | 4-6人用 |
対象年齢 | 10歳以上 |
ゲーム概要
ベルギー人デザイナーによる正体隠匿系協力ゲーム「パニックステーション」です。エイリアンの侵略によって突如として通信が途絶えたステーションに潜入し、その巣を焼き払うことが目的のゲームです。メンバーの中に素性を隠した感染者が含まれており、人間VS感染者の戦いとなる人狼テイストの入ったゲームになっています。
プレイヤーは政府から派遣された特殊部隊の1人となりますが、その中の誰かは数ターンのうちに感染してエイリアン側の人間になってしまいます。調査の途中に得られるカードに宿主を示すカードが含まれているのです。
感染者を見抜き、パニックステーションを調査せよ
調査は「リアクタールーム」というスタート地点から始まります。各プレイヤーは、人間とそれに随伴するアンドロイドの2キャラクターを担当することになります。アンドロイドは拳銃で武装しており、弾丸を入手することにより寄生虫や他のプレイヤーを攻撃することができます。しかし、人間が装備しているのは火炎放射器。これは最後にエイリアン(寄生虫)の巣を焼くことにしか使えないので、護衛にアンドロイドの助けが必須です。
ゲームの手番はアクションポイント(AP)制。各キャラクターが持つAPを使用して探索、調査、移動、攻撃を行っていきます。
ゲーム開始当初はステーションの全貌が明らかになっていません。そのため、自分の隣の部屋を探索しながらマップを明らかにしていき、その部屋を調査することによってアイテムを手に入れていきます。しかし、一度調査した部屋を再び調査すると、周りに寄生虫が湧く仕掛けがあるので注意が必要です。4面ダイスを振って寄生虫の湧く部屋を決定します。
また、プレイヤーの手番が始まる前に、寄生虫達が蠢くフェイズが用意されています。施設内でキャラクターを見つけた寄生虫は問答無用で襲いかかってきます。
ゲームに使用する山札は2種類。ステーションの地図を表示するカードと、調査して手に入れるアイテムカードです。アイテムカードには、宿主を決めるカードや寄生虫が湧くカードも混じっているので注意しないといけません。
ゲーム中、各自の手札は上の写真のような感じになります。2キャラクター間で手札は共通、感染も共通です…。手前にある血痕のカードは感染カードで、各自の色が刻印されています。これを他人から受け取ることによって感染が広がるのです。
感染は突然に…
同じ部屋に、他のプレイヤーが居た場合、持ち物の交換を行います。非感染者同士では、弾丸のやり取りや、巣を焼き払うのに必要なガソリンを集めたりします。しかし、感染者との交換では、もしも相手が自分の感染カードを渡してきた場合、自分も感染し、感染が拡大してしまいます。ニコニコしていたあの人から貰ったカードを見た瞬間、それが感染カードだった時の絶望感が凄いです。
ただし、誰かの居る部屋に入室した際、発砲することで交換をキャンセルすることができ、また、交換時にガソリンを渡すことでも感染を防ぐことができます。しかし後者のガソリンは、人間側が勝利するのに必要な物資なので、エイリアン側に渡し過ぎるのも考えものです。
熱源スキャンで感染者を炙り出し、敵の巣を焼く
感染者をあぶり出すには、ターミナルPCがある部屋で行うことのできる熱源スキャンが有効。各自は感染/非感染カードを秘密裏に出し、全体に何人の感染者が居るのかを明らかにします。
疑惑が広がった時、感染者拡大の経緯を推理し合い、その数を熱源スキャンでチェックすると言う流れになります。これをはずすと自分が疑われると言う罠にもつながりかねません。
最後は、エイリアンの巣を発見し、そこに人間キャラクターを移動させてガソリン3枚をプレイして焼き払えば人間の勝ち。それ以外、人間キャラが全滅したり、全員が感染したりするとエイリアン側の勝ちとなります。ただし、エイリアン側が勝利する場合、最後に感染したプレイヤーは勝者に数えられないので注意です。
正体の読み合いと熱源スキャン、疑心暗鬼の中暗闇を調査するのが楽しいゲームです。詳しくは日本語ルールを公開していますので、そちらでどうぞ。
プレイ記
TBGL宮原ゲーム会にて、MOGさん、Tさん、流さんと4人プレイ。
COQの初期手札。この時点で感染は無い。宿主のカードがアイテムデッキの上20枚のうちのどこかに隠されている。既に感染者が居るのか、顔色を伺うも、情報は少ない。
全員がステーションに侵入成功。COQは赤いキャラクターを担当。
早速、そこかしこに寄生虫が湧き、これらを避けるために弾丸を手に入れるのが必須となる。しかし、アイテムカードをめくればいつかは誰かが感染する。
感染者は誰なんだ。
暫く、怪しい状態が続くが、おおよそ20枚以上のカードが配られてもCOQの手札には宿主カードが無い。落ち着き払うMOGさん、目をギョロつかせるTさん、それぞれが怪しく見える。
MOGさん、その動き怪しくないですか?
そういうCOQさんこそ、怪しいんじゃないですか?
自分の手札を見せることは禁じられているので、説得という手段しか選ぶことはできないが、口を開く程に疑われるという仕様は、人狼系のゲームと一緒だ。
すると、Tさんのキャラクターの1人がCOQの部屋へ侵入してきた。こうなると、カードの交換を余儀なくされる。
怪し過ぎるッ。
にこやかにカードの交換などできる筈も無く、ガソリンを提示することにする。
すると、相手からの提示もガソリン。MOGさんのお陰でこちらも疑われていたようだ。これは、Tさんはこの時点でシロだと断定しても良いのだろうか?
しかし、その後ステーションの片隅で、MOGさんとTさんは濃密にカード交換を行っている。しかも、MOGさんはしきりにCOQに感染者の疑いをかけるような言動を発している。これは、この2人は既にヤバいのではないだろうか…?
この二人は感染している可能性が高い!気をつけて!
いやいや、それはあなたのほうでしょう。
そうこうしているうちに、COQの手札にはガソリンが3枚揃った。これで、感染は防げるし巣が出れば焼ける。しかし、唯一残った流さんに感染者達の魔の手が迫る。
流さん!逃げてッ!
何言ってんの、危ないのはCOQさんでしょう?
いいからここはガソリンを出すんだ!
どうだろう。どうやらガソリンを出したようだが、詳細はわからない。
感染の輪に加わってしまったかもしれない青・オレンジ・緑の三人。COQのキャラクターは警戒され、単独での探索を余儀なくされている。
すると、彼らのキャラクターの南側に、ターミナルPCを備えた部屋が現れた。ターミナルPCにアクセスし、熱源スキャンを行えば、推理が正しいことを証明できる。
誰か、スキャンを実行して下さい。MOGさんとTさんが怪しい!
いや、ちょっと先に調査させてよ、アイテムが欲しいんだ。
そう言ってスキャンを拒否するTさん、みんな揃って行動が怪し過ぎる…
すると、COQの求めに応じる形で、MOGさんがスキャンを実行。
これで感染者は2人と出る筈です!
だが、感染者はなんと1人。ますますCOQへの風当たりが強くなる。
これでCOQさんが益々怪しくなりましたなー
そんな筈は無い、だって感染してないもの…。
こうなったらもう、武装して自分の身を守るしかない。拳銃を捨て、ヘビーガンを装備。そして、ポケットの中の手榴弾の感触を確かめる。
セキュリティドアのキーカードを持っているのは今のところCOQだけなので、セキュリティドアの向こう側に立てこもるのも有効である。
すると、MOG&Tの怪しいコンビが一斉にCOQの人間キャラクターに向けて移動してきた。恐ろしい…、追いつめられては困るので、探索を行って逃げ道を確保したいが、次の部屋のカードはどうしてもCOQの周辺には形が合わず、配置できないカード。そうこうしている間にも二人は迫ってくる。
流さんの手番。動きが鈍いと思ったら、探索によって、巣カードがCOQの周りに配置されることを危惧して躊躇している。
信じて!僕で勝負して下さい!
切実に訴えるCOQ。
そして、現れた巣カード。
やった!ナイス!!!
間一髪、上部に巣カードを配置してこれを焼き払い、人間の勝利条件を満たすCOQ。こうして、人間側に勝利が訪れたのであった。
この後、感染状況の確認。
なんと、感染者は初期手札からTさんだったらしい。ただし、飛び交うガソリンカードによる正体の発覚を恐れ、感染の拡大には踏み切れなかったとのこと。今回はガソリンカードが序盤から豊富に出たため、人間側の有利に運んでいたようだ。
プレイ時間:60分
総評
Bronze
私はもともと人狼系のゲームが大好きなので、正体隠匿系のゲーム中にその正体を論じ合うことの出来るルールが面白いと思います。あまりスピーディな展開だと正体を隠匿する暇も無かったりするので、60分間施設を探検できるこのゲームでは、そのあたりのバランスは良いと思う。また、探索や調査、寄生虫を拳銃で始末するところなど、テーマの再現性も良く出来ていると思いました。ただし、これは人間側でプレイした時の感想です。
感染者側に立ったプレイヤーの感想によると、無理ゲーとか。序盤から溢れかえるガソリンカードのせいで、とても感染カードをばらまける状況では無かったようです。また、アイテムカードはどれも強力なので、交換といえば、まずは要らないガソリンが飛んでくる。相手がガソリンを出したのに、感染カードを出してしまえば、直ぐに正体がバレてしまうというわけです。特に今回のゲームでは序盤からガソリンカードがたくさん登場してしまったのでその色が濃くなったのかもしれません。
実はこのゲーム、不利過ぎる感染者側の状況をルールの更新によって調節した経緯のあるゲームなのです。したがって、調整がまだ足りないと言えるのかもしれません。交換に使用したガソリンカードは、感染を防ぐ効力を失う、序盤に登場するガソリンカードの数を減らすなどのさらなるルール改正が必要だったのかもしれませんね。私は人間側だったので面白かったですが。
「満月(フルムーン)」という人狼系のゲームに似たプレイ感かもしれません。あちらは狼がかなり強いので逆に人間側が辛いですが。裏切り者が混じっている協力ゲームとしては、「キャメロットを覆う影」なんかも近いかもしれません。
このゲームも、「キャメロットを覆う影」などの裏切り者入り協力ゲームと同じ様に、裏切り者は疎外感と共に違うゲームを味わうものだと割り切って楽しむのが良いのかもしれません。そういった楽しみ方ができる人たちと遊ぶゲームでしょう。
私はそういった中で裏切り者を演じたりするのが大好きなのですが、いつもその役割をひくことができません。とても残念です。それがゲームを支える裏方の役目だったとしても、喜んで演じるのですが。
このゲームの最適人数は、5〜6人らしいです。作者のDavidに和訳のことで連絡したのが昨日のことのようですが、もう10年前のゲームなんですね。懐かしい。交換したカードが感染カードだった時の胸の鼓動が忘れられないゲームです。