
1942年 ドイツ生まれ
ボードゲーム業界に偉大な功績を残した3K(他の二人はクニツィアとトイバー)の一人と称される。ドイツで初めてボードゲームデザイナーを専業とした。エリアマジョリティとアクションポイント制を得意とする。現代では当たり前となったボード周囲の得点トラック(クラマートラック)を考案したことでも有名。カードゲームデザインも得意。

1957年 ドイツ生まれ
クラマーとの合作で知られているが、単独作である「ヴァイキング」や「アズール」でも名声を得ている。本業は、ドイツのソフトウェア開発会社のマネージャーであった。驚くべきことに、クラマーとの合作では、長らく電話とFAXのみでコミュニケーションをとっており、実際に会うことなく作業を進めていた。
ユーロゲーム界の巨匠:ウォルフガング・クラマーとミヒャエル・キースリング
ボードゲーム、特にユーロゲームが好きなら、ウォルフガング・クラマーとミヒャエル・キースリングの名前は聞いたことがあるだろう。二人ともドイツ出身のゲームデザイナーで、数々の名作を世に送り出してきた。このページでは、この二人の巨匠について、その経歴や代表作、そして彼らがユーロゲーム界に与えた影響について詳しく見ていこう。
ウォルフガング・クラマー:ユーロゲームの礎を築いた男

ウォルフガング・クラマーは、1942年生まれのドイツのゲームデザイナーだ。商業科学を学ぶかたわら、サイコロを使わないレースゲームの開発を始めた。これが後の彼のゲームデザイン哲学の基礎となる「プレイヤーに選択肢とコントロールを与える」という考え方に繋がっていくことになる。
彼は「ゲームデザイナーは、プレイヤーに多くの選択肢を与え、彼らが自分の意思決定でゲームを進めていくことができるようにするべきだ」と語っている。 この哲学は、彼のゲームデザインにおける特徴である、多様な選択肢、戦略の自由度、そしてプレイヤー間のインタラクションに明確に表れていると言えるだろう。
会社員として働きながら、彼は自信が開発した新しい移動システムを「テンポ」というアブストラクトゲームに発展させた。後にこれを改良し、「フォーミュラワン」というカーレースゲームとして発表している。 フルタイムの仕事を続けながら、彼はさらにいくつかのゲームをデザインし、そのうちの2つはドイツ年間ゲーム大賞を受賞した。1989年にフルタイムのゲームデザイナーとなり、今日までに200以上のゲームをデザインしている。
クラマーは、ゲームデザイナーの認知度向上にも貢献している。1988年のニュルンベルク国際玩具見本市で、彼は他のデザイナーたちと共に、箱にデザイナーの名前が記載されない限り、出版社にゲームを販売しないという協定に署名した。 これは、ゲームデザイナーが正当な評価を受けるための重要な一歩だったと言えるだろう。
ミヒャエル・キースリング:抽象的戦略ゲーム

ミヒャエル・キースリングは、1957年生まれのドイツのゲームデザイナーだ。1989年からフルタイムのゲームデザイナーとして活動している。 キースリングは、タイルプレイスメントゲームの名手として知られており、彼の代表作である「アズール」は、世界中で大ヒットを記録した。アズールは、美しいタイルを自分のボードに配置し、パターンを作ることで得点を競うゲームだ。シンプルなルールながら、奥深い戦略性と美しいコンポーネントで、多くのプレイヤーを魅了している。
キースリングのゲームは、どこか抽象的な戦略ゲームでありながら、プレイヤーに満足感を与えるようなメカニズムを備えていることが多い。「アズール」は、2018年にドイツ年間ゲーム大賞を受賞し、キースリングの名を世界に知らしめた。アズールシリーズはその後も様々なバージョンが発表され、いずれも高い人気を誇っている。
キースリングのゲームは、基本ゲームと上級ゲームのルールが同梱されていることが多くある。基本構造をじっくりと身につけた後に、拡張要素を十分に楽しんでもらいたいという気遣いが見える。
キースリングは、アズール以外にも、「ヘブン&エール」や「ヴァイキング」など、数々の名作を生み出している。 ヘブン&エールは、修道院のビール醸造所をテーマにしたゲームで、資源管理とワーカープレイスメントを組み合わせた、やりごたえのある作品だ。ヴァイキングは、このブログの該当記事を見てもらった方が早いだろう。
最強タッグ:クラマー&キースリングの共作ゲーム
クラマーとキースリングは、それぞれが高い評価を得ているゲームデザイナーだが、二人で協力して制作したゲームも数多く存在する。
その中でも特に有名なのが、「ティカル」、「メシカ」、「ジャワ/クスコ」の3作品だ。これらは「マスクトリロジー(怖い顔三部作)」と呼ばれ、いずれも探検とタイルプレイスメントをテーマにした作品だ。



- ティカル (1999年): マヤ文明の遺跡を探検し、寺院を建設するゲーム。1999年にドイツ年間ゲーム大賞とドイツゲーム賞を受賞。
- メキシカ (2002年): アステカ文明を舞台にしたゲームで、湖に浮かぶ島々をタイルで埋め尽くし、寺院を建設していく。
- ジャワ (2000年): インドネシアのジャワ島を探検し、資源を集めながら、都市や寺院を建設していく。
マスクトリロジーは、いずれも高い戦略性とテーマ性、そして美しいコンポーネントで、多くのプレイヤーを魅了した。
その他にも、クラマーとキースリングは、以下のような共作ゲームを発表している。
- トーレス (2000年): 中世スペインを舞台に、城を建設していくゲーム。
- プエブロ (2002年): 3次元のパズル要素を取り入れたアブストラクトゲームで、自分の色のコマを隠しながら、相手のコマを見つけることを目指す。
- アサラ (2010年): アラビアの都市を舞台にしたゲームで、建物を建設し、キャラバンを派遣することで得点を競う。
- カッラーラの宮殿 (2012年): 大理石の産地として有名なカッラーラを舞台にしたゲームで、建物を建設し、都市を発展させていく。
これらの共作ゲームは、いずれもクラマーのゲームデザイン哲学とキースリングのタイルプレイスメントの才能が見事に融合した作品と言えるだろう。
ユーロゲームにおけるクラマー&キースリングの影響
クラマーとキースリングは、ユーロゲームの歴史に大きな影響を与えたゲームデザイナーだ。彼らのゲームは、以下のような特徴を持っている。
- テーマ性よりもメカニズム重視: ユーロゲームの特徴である、テーマよりもゲームシステムを重視するデザインは、クラマーとキースリングの作品にも共通して見られる。
- プレイヤー間の直接攻撃を避ける: ユーロゲームでは、プレイヤー同士が直接攻撃し合うことは少なく、間接的なインタラクションを通してゲームが進行する。クラマーとキースリングのゲームも、この特徴を色濃く反映している。
- 運の要素を最小限に抑える: ユーロゲームでは、運の要素を最小限に抑え、プレイヤーの戦略と選択が勝敗を左右する。クラマーとキースリングのゲームも、この原則を忠実に守っている。
これらの特徴は、現代のユーロゲームにも受け継がれており、クラマーとキースリングは、ユーロゲームの礎を築いたデザイナーと言えるだろう。
まとめ:ユーロゲーム界のレジェンド
ウォルフガング・クラマーとミヒャエル・キースリングは、ユーロゲーム界に多大な影響を与えた、まさにレジェンドと呼ぶにふさわしいゲームデザイナーだ。彼らのゲームは、世界中のゲーマーに愛され、プレイされ続けている。
クラマーとキースリングは、ドイツ年間ゲーム大賞の歴史においても、重要な役割を果たしてきた。クラマーは、5回もの受賞歴を誇り、これは他のどのデザイナーよりも多い。キースリングも、「アズール」で受賞を果たしている。また、彼らの共作である「ティカル」も受賞しており、二人のゲームデザインが、ドイツ年間ゲーム大賞に大きな影響を与えてきたことがわかる。
さらに、彼らが確立したゲームデザインの原則は、多くのデザイナーに影響を与え、今日のユーロゲームの発展に貢献していると言えるだろう。 もし、まだ彼らのゲームをプレイしたことがないなら、ぜひ一度手に取ってみてほしい。きっと、ユーロゲームの奥深さに魅了されるだろう。
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